2024年7月の東京都知事選で、候補者ポスターが大混乱を引き起こしました。「NHKから国民を守る党」(N国)が公営掲示板のポスター枠を事実上“販売”し、選挙とほぼ無関係のポスターが大量に貼り出されたのです。選挙をおもちゃにするかのようなこの行動は記憶に新しいところですが、こうした事態を未然に防ぐため、公職選挙法の改正案がこの1月に召集される通常国会に提出されることになりました。果たしてどんな手立てを講じるのでしょうか。公職選挙法の改正案とポスター問題をやさしく解説します。
都知事選でN国はなにをしたのか
2024年の都知事選で大混乱を引き起こしたのは、政治団体「NHKから国民を守る党」(N国)のポスターです。公認と関連候補合わせて24人を擁立したN国は、党に「寄付」をすれば、寄付者が自由に制作したポスターを公営掲示板に貼ることができると事前に宣伝。早くに申し込んだ人には割引なども行い、ポスター枠を事実上“販売”しました。
【関連記事】
◎【カオスな選挙ポスター】ほぼ全裸女性も登場し「珍獣博覧会」状態…公職選挙法の限界、どう規制する?
この都知事選には過去最多の56人が立候補し、東京都選挙管理委員会が用意した48人分の掲示枠では足りない事態になっていました。そうしたなか、N国の掲示枠には、選挙とは無関係のペットの写真や性風俗店のPR、全裸に近い女性のポスターなどが大量に貼り出され、「掲示板ジャック」と呼ばれる状況が起きたのです。N国によるポスター枠の“販売”の結果でした。
こうした事態に対し、有権者は大きな戸惑いを覚えたようです。都選管には告示日とその翌日の2日間で約1200件もの苦情が殺到。警視庁は、性的なポスターや風俗店の広告は都迷惑防止条例や風俗営業法に違反するとして陣営に警告を発しました。
しかし、「自由な選挙」は民主主義の根幹です。公選法で厳密に規定されているポスターのサイズなどの違反ならまだしも、内容に規制はありません。そのため、陣営に対して安易な注意をすれば、選挙妨害と言われかねず、ポスター問題は法の隙間を突く形となり、野放しのままでした。
このため、多くの有権者や政界関係者から「さすがにやりすぎ」「日本の選挙は公営選挙。当選を目的としない者に公費を使うのはおかしい」といった批判が相次ぎました。そして、国会では公職選挙法の改正が議論される運びになったのです。