悪質なカスタマーハラスメントがあれば、行為者の氏名を公表するというカスハラ防止条例が三重県桑名市で成立しました。同趣旨の条例は各地で制定の動きが出ていますが、氏名公表まで踏み込んだ条例は全国で初めてです。業務の妨げになるだけでなく、対応する者のメンタルも傷つけていくカスハラ。対策の最前線はどうなっているのでしょうか。カスハラ条例をめぐる動きをやさしく解説します。
氏名公表に踏み込む
桑名市カスタマーハラスメント防止条例案はこの12月25日、桑名市議会で採決され、賛成多数で原案通り可決されました。2025年4月から施行されます。
この条例の最大の特徴は、単に理念を掲げただけではなく、制裁措置を明文化した点にあります。条例では、桑名市内の事業所やそこで働く人々が客から理不尽な言動や要求を受けた場合、弁護士らでつくる専門家委員会が調査に着手。「カスハラがあった」と判断された場合、行為者に警告を発します。
それでも理不尽な行為が止まらなかった場合、その氏名を1カ月程度、市のホームページで公表するというものです。
同姓同名などによる混同を避けるため、氏名公表に際しては住所の一部も公表するなどし、“理不尽客”を特定して広く市民に知らせる方針です。条例制定へ向けた桑名市の検討会や市議会では、氏名公表に慎重意見も出されましたが、最終的には「理不尽な行為は許さないという決意を示すべきだ」という意見が上回りました。
伊藤徳宇市長は条例成立後の記者会見で、「桑名で働いている人をしっかり守りたいという思いで、大きな一歩を踏み出すことができた」と語っています。
桑名市がこうした強い姿勢を示した背景には、カスハラ被害が年々深刻化している実態があります。