民主主義を脅かす懸念、鳥取県は条例制定
候補者と無関係な選挙ポスターが大量に貼られるケースを法的に防ぐ仕組みには、実は先行例があります。2024年10月に成立した鳥取県の「健全な民主主義のための公明かつ適正な選挙の保持等に関する条例」で、同年夏の都議選の混乱を教訓として生まれました。
鳥取県条例は選挙ポスターについて、「ポスターは選挙運動のために使用するものであって、財産上の利益を得るために使用するなど、選挙運動のために使用するもの以外のものを掲示場に掲示してはならない」と定めました。ペットの写真や性風俗店PRのポスターが乱立した東京都知事選のような状況を許さない姿勢を示したものと言えます。
そのほか、「候補者以外の者が掲示し、または公営ポスター掲示場ごとに1枚を超えて掲示してはならない」とも規定しました。これも、東京都知事選で起きたような“掲示板ジャック”を防ぐことを狙いとしています。
さらにこの条例は、条例に反するポスターが掲示された場合には選挙管理委員会が撤去命令を出すことができると規定。また、動画配信などによって陣営が利益を得た場合、選挙運動費用収支報告書に記載しなければならないとしました。公選法違反(選挙の自由妨害)に当たる行為などに対しては、選管や警察が協力して速やかに停止させることも盛り込んでいます。
鳥取県の平井伸治知事は条例制定直前の記者会見で、次のように語り、民主主義への懸念を示しています。
「昨今相次いで行われている選挙において、選挙運動の自由が脅かされ、適正な選挙運動と言えるのかというものが実際に出てきて、社会問題化している。公職選挙法にはきちんとルールがあるが、(ルールを)守られないことが、あたかも社会全体が容認しているかのような状況にあるのではないか」
平井知事は東京都知事選のポスター問題や、選挙の自由が妨害されていることなどに「強い危機感を持っている」とし、ルールは守ってこそルールになるとの見識を示しました。鳥取県の条例に罰則規定は盛り込まれていませんが、営利目的や他陣営の中傷などは絶対に許さないという強い姿勢を示したものと言えるでしょう。