スバルがソフトウエア開発に力を入れている=写真はカナダ国際オートショー(写真:ロイター/アフロ)
目次

「ぶつからないクルマ」でお馴染みの、スバルの運転支援システム「アイサイト」がさらに進化する。スバルは、東京・渋谷に新設したソフトウエア開発拠点を報道陣に公開し、アイサイトを含めたデジタル技術に関するビジネス戦略を説明した。登壇したのはスバルのデジタル領域を取りまとめる執行役員で、アイサイトには初期開発から携わっている「ミスターアイサイト」こと柴田英司氏だ。柴田氏の説明を聞きながら、スバルの未来を考えた。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 スバルは、大規模な再開発が進む渋谷駅周辺で特に大きな商業施設・渋谷スクランブルスクエアの高層階に新たなオフィスを構えた。

「なぜ、スバルが渋谷に?」と、思う人もいるだろう。

 スバルといえば、群馬県太田市に技術開発の本部や主要工場を持つ、群馬を代表する企業である。また、1966年から2014年まで48年間、本社機能は新宿駅西口に隣接する新宿スバルビルにあった。

 2014年8月には、本社機能が恵比寿駅の徒歩圏内に移転しているが、表通りに面していないこともあり、一般的にはスバルに対して恵比寿の企業というイメージは薄い。

 だが、実は2020年のコロナ禍直前に、スバルは渋谷に進出している。

 ソフトウエア開発を主体とする「SUBARU Lab」の一環で、当時開かれた報道陣向けのお披露目式に筆者も参加した。

スバルの執行役員、技術本部 副部長・SUBARU Lab所長の柴田英司氏(写真:筆者撮影)

 その際、SUBARU Lab所長となった柴田英司氏は「新しい人材確保には、恵比寿ではなく渋谷という場所が必要だ」と、強調していたことを思い出す。

 確かに、渋谷はいまやベンチャー企業が多数進出し、日本のシリコンバレー化している。だが、スバルにとって渋谷という場所がそれほどまでに必要なのか、筆者としては疑問を持った。

 あれから4年以上が過ぎ、実際はどうだったのか。柴田氏は、実際に優秀な人材がスバルに集まり始めており、渋谷進出が正しかったと言い切った。