スーパーアプリの開発も
具体的には、2020年代後半から2030年代に向けたEVシフトに向けて、クルマ全体の制御方式を刷新する。
これまでアイサイト開発で連携していた、半導体メーカーのAMDやonsemiとの連携をさらに強化し、アイサイトを含むEVの統合制御ECU(集積回路)を、スバルが内製化する。
また、クルマ内外の機能のすべてを1つのアプリで完結する「スーパーアプリ」の開発も進める。
さらに、製造・卸業を主体とするスバルと、新車を販売する企業との関係についても変革する。現行の研究開発・量産開発・購買・営業・販売などのスバル社内部署に「横串を指す」という大胆な戦略を打ち出している。EVシフトで「ディーラー(販売企業)の収益構造も変わり得る」との見方が背景にある。
変革の達成目標は「2020年代後半」に設定している。時間軸に多少、余裕を持たせているのは、トライ&エラーを短期間に繰り返して最良の顧客体験サービスを創造することを目指しているからだ。
つまり、これまではアイサイトという尖った運転支援技術を開発することがスバルのデジタル技術領域の中核だったが、今後はスバルの車両技術全体と顧客サービスを巻き込む大きなスケールへと進化しようとしているのだ。
規模を拡大した渋谷の「SUBARU Lab」は、「次のアイサイト」だけではなく、スバルという会社の未来を大きく左右する役割を担ったということだ。
はたして、どんな変革が渋谷から生まれるのか、いまからとても楽しみである。
桃田 健史(ももた・けんじ)
日米を拠点に世界各国で自動車産業の動向を取材するジャーナリスト。インディ500、NASCARなどのレースにレーサーとしても参戦。ビジネス誌や自動車雑誌での執筆のほか、テレビでレース中継番組の解説なども務める。著書に『エコカー世界大戦争の勝者は誰だ?』『グーグル、アップルが自動車産業を乗っとる日』など。
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