受注が一時中止されている「ジムニーノマド」(写真:筆者撮影)

スズキはいま、中小企業型経営を忘れずに、先端産業にチャンレンジする大企業へと進化しようとしている。同社は2月20日、新たな中期経営計画(2025〜30年度)を発表した。筆者は記者会見を通じて大胆な成長目標を掲げたスズキに覚悟を感じる一方、不安も感じた。その理由を解説したい。

(桃田 健史:自動車ジャーナリスト)

 記者会見の冒頭、鈴木俊宏社長は次のように述べた。

 最初に、スズキの今までとこれからについてお話させていただきます。

 スズキは2021年に故・鈴木修元会長の体制から、私を中心とした集団指導体制に移行しました。それから3年半、「在り方を変えずに更なる強化」と「在り方を時代の進化に合わせたアップデート」を行ってきました。

〜中略〜

 鈴木修元会長は、この移行に際し、相談役として見守りながら多くの助言をくださいました。

 2025年、全てのスズキ社員にとって、鈴木修相談役がいない初めての年を経験します。スズキは、スズキのOSと経営の原則に従い、これからも進化し続けます。

 なお、スズキのOS(オペレーティングシステム)とは、「社是」と「3つの行動理念(小・少・軽・短・美、三現主義、中小企業型経営)」を指す。

 自身を「中小企業のオヤジ」と称してきた修氏のワンマン経営手腕により、インドや東欧への進出、また中国やアメリカからの四輪事業撤退など、スズキは他の日系自動車メーカーとは別の道を歩むことを選択してきた。

 そうして構築された事業基盤の上で、鈴木社長が「チームスズキ」と呼ぶ取締役・本部長・部長などの間に横串を刺した集団指導体制で、データに基づく実績の評価と将来予測をしてきた。

 現在の中期経営計画は、2021〜25年度を対象としているが、「チームスズキ」としての実効性を高めるため、1年前倒しで新中期経営計画に移行することになった。