「アップル銘柄」から「エヌビディア銘柄」に変貌

 大きな動向として、鴻海では米エヌビディア向けAIサーバーの受託生産が増え、いまや売上高に占める比率はAIサーバー関連がスマホを上回り、「アップル銘柄」から「エヌビディア銘柄」に変貌した。

 鴻海は「AI、半導体、通信の3つのコア技術に投資し、EV、ロボット、ヘルスケアの3つを次世代ビジネスと位置付け、スマート製造、スマートEV、スマートシティーといった3つのスマートプラットフォームを構築する戦略だ。

 AIサーバー関連では、鴻海は日本国内に投資する方針だ。液晶テレビを生産していたシャープの亀山第2工場でAIサーバーの生産を始める計画。半導体受託製造世界最大手である台湾のTSMCを日本政府が巨額の補助金を出して熊本に誘致したのは、重要戦略物資を海外生産に依存するのではなく、自国で生産拠点を持つことで有事など万が一の際にも半導体の国内への供給が途絶えないようにするためだ。

 こうした経済安全保障上の国家戦略は、自国の力だけで進めるのが無理な場合、同盟・友好関係にある国・地域と手を組むのが世界の潮流と言えるだろう。AIサーバーに関しても同じだ。20世紀は「石油の時代」と言われ、石油があらゆる産業の発展を支えてきたが、これからは石油に代わって「データの時代」になるだろう。

 データをどう確保し、処理して活用していくかが産業界の優勝劣敗を決める一つの要素になる。そのデータを扱うAIデータセンターの生産や運営を他国に頼らずに自国でしっかり対応することを「ソブリン(主権)AI」とも呼ぶ。データを懸念国に奪われないという発想も重要になる。TSMCを誘致したように友好関係にある台湾企業とAIサーバー関連で組むのは経済安保上、重要だ。

 三菱電機と鴻海は25年11月6日、AIデータセンター分野で提携すると発表した。鴻海が手掛けるAIデータセンターのサーバー向けに、三菱電機が電源装置や冷却設備などを納入する計画だ。こうした協業は日本企業の商機を拡大させることにもなる。

 今後の戦略として鴻海はエヌビディア以外にも米オープンAI、米グーグルの親会社であるアルファベット、米ウーバーなどとの戦略的提携を強化していく方針だ。

「テックデイ」でのプレゼンテーションの中で劉会長は「私たちは労働集約型企業から技術集約型企業に転換している」とも語った。

日本市場向けに開発されたモデルA(写真:井上久男)

 また「テックデイ」での展示の中心に置かれたのが、日本市場に投入を予定しているMPV(マルチ・パーパス・ビークル=ミニバン形状の多目的乗用車)タイプのクルマ「モデルA」だった。劉会長は「このクルマは日本人が造った」と説明したが、鴻海のEV部門には日産やマツダなどからかなり転職している。