CoWoSが月産10Kなら赤字になる

 試算は残酷な現実を示す。仮に、JASM P2向けのCoWoSの割り当てが月産10Kにとどまれば、前工程の能力が十分でも工場は赤字に沈む(図7)。黒字化には少なくとも15K以上の割り当てが必要になる。

図7 JASM Phase2でN3によりAI半導体用ウエハを出荷した場合の粗利率(歩留まり90%、TSMCのCoWoSのCapacityを確保できたと仮定)
出所:筆者の調査による
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 したがって、重要なのは、前工程の生産能力ではない。後工程のCoWoSパッケージの割り当てが、そのままJASM P2の利益を決めるのである。

 AI革命は半導体産業の支配点を変えた。かつて、半導体の価値はトランジスタの微細化に宿っていた。しかし、現在は前工程と後工程の「統合」に宿っている。

熊本の運命は台湾で決まる

 ではTSMC本体はJASMに十分なCoWoSのキャパシティを回すだろうか。これはまったく楽観視できない。TSMC自身がAI需要の爆発に対応するため後工程の確保に追われているからだ。

 TSMCのCoWoSのキャパシティは、2025年末で月産60K強、2026年末でも月産100K程度にしかならない。つまり、1年間で月産30K程度しか上積みできない。しかしこれでも、TSMCは死に物狂いでCoWoSのキャパシティ向上に努めているのである(図8)。

図8 2.5D(CoWoS)パッケージのCapacity(K/M)の推移
出所:Joanne Chiao( TrendForce )、「2026年ファウンドリー市場の展望ー先端プロセスの優位性と成熟プロセスの飽和」(2025年12月16日)のセミナーのスライド
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 そして、TSMCがCoWoSパッケージの割り当てを優先させるのは、最大顧客であるエヌビディアやブロードコムである。これらの顧客は、可能な限り速やかに前工程からCoWoSまでを完了してくれることを強烈に望んでいる。CoWoSのリードタイムが半年もかかるため、なおさらこの傾向に拍車がかかる。

 その結果、輸送という手間暇と時間が余計にかかる海外拠点のJASM P2が、どこまで配分を受けられるかはまったく読めない(期待もできない)。もしCoWoSのキャパシティ15Kを確保できなければ、第2工場は極めて厳しい立場に置かれる。