
イスラエル軍は6月13日、イランの核施設等に対して空爆を実施した。
主に、ナタンツ濃縮施設、エスファハンのウラン転換施設、アクラ重水炉、アラクで稼働停止中の原子炉、モダレスロケット生産施設、ケルマンシャーミサイル配備施設、タブリーズンのミサイル施設などの施設を破壊した。
衛星写真でその結果を見ると、狙ったと見られる地上の建物にミサイルが命中して破壊され、黒焦げになっているのが明瞭に分かった。
そして米国は6月21日、フォルドゥのウラン濃縮施設に、ミサイル攻撃を行い破壊した。
イスラエルと米国は、地下に設置されていたウラン濃縮施設に「バンカーバスター」と呼ばれる地中貫通爆弾を使った。
だが、衛星の映像を見る限り、ミサイルが貫通した穴は見えるが、破壊の状況は見えていない。
イランの核施設建設の経過からイスラエルと米国の攻撃の成果まで、商用の衛星映像が世界のメディアに流れている。
米国の軍用衛星であれば、さらに詳細が判明していることだろう。
衛星映像は、イスラエルと米国のミサイル攻撃に使用されているし、その一部が我々にも伝えられているというのは、大きな特異点でもある。
そこで、商用の衛星の映像を参考にして、ナタンツ(Natanz)やフォルドゥ(Fordow)の地下各施設はどのように建設されたのか、どれほど堅牢なのか、その施設に攻撃はどのように行われたのかを分析し、検証する。
1.ナタンツのウラン濃縮地下施設の構造
イスラエル空軍は6月13日、約40機の空軍機で夜間の空襲を行い、ナタンツの核兵器開発施設(ウラン濃縮施設「数十か所」)を攻撃した。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は6月15日、同国軍がナタンツの主要なウラン濃縮施設を破壊したと表明した。
IAEA(国際原子力機関)の発表によれば、「60%まで濃縮したウラン235を生産していたパイロット燃料濃縮工場の地上部分が破壊された」だけだったという。
さらに、「地下施設への物理的な攻撃の兆候は見られなかった。影響があるとすれば、電源喪失により地下の遠心分離機が損傷した可能性があるだけ」だとの見方も示している。
攻撃の結果を見るには、まず、ナタンツの地下ウラン濃縮施設はどのように建設されたのかを知る必要がある。
ナタンツの左写真2002年9月20日工事中(土で埋められていない)の映像と右写真2004年2月29日工事完了後(土で埋められてしまった)の写真を比較する。
写真1 ナタンツのウラン濃縮施設(特に地下の部分)
図1 ナタンツの地下のウラン濃縮施設のイメージ

ウラン濃縮施設は、左の工事中の写真では、まず地面が掘り下げられて、そこに地下施設が作られていることが分かる。
地下の濃縮施設が工事中のようである。
①は、地下に施設を建設中のようだ。
②は、3分の1が土、3分の2がコンクリートで建物の基盤造成中に見える。
③は、半分が土、半分がコンクリートで建物の基盤造成中のようだ。
右の写真は、建物が完成した後に施設には土が被せられ、上空からは何もないように見える。
覆った土砂の量は、映像から見て高低差が少ないことから、数メートルから10メートルだろう。
被せられた土は、上空からの偵察に発見されないようにするためと、爆撃されても重要施設が破壊されないようにするためだと考えられる。