形は似ていても中身には雲泥の差がある。写真は米陸軍の主力戦車「M1エイブラムス」(2024年4月5日韓国での訓練で、米陸軍のサイトより)

 北朝鮮の最高指導者、金正恩総書記は頻繁に軍事工場の新型兵器を視察し、海軍軍艦進水式に参加している。

 その時に発言している内容と公表される写真には、いつもながら北朝鮮が望む要求(発表)と現実とが大きく乖離していることが多い。

 そこで、具体的にはどうなのか、その疑念について一つずつ分析してみたい。

1.朝鮮式の最新式戦車製造に期待

 米国陸軍省が2020年7月に発表したリポートによると、北朝鮮は現在、約3300両の戦車を保有している。

「T-34」が約8%の250両、「T-54/55」が約30%の1000両、「T-62」およびその改良型(チョンマ号)が約37%の1200両、「T-72」またはこれに似せた戦車(ソングン号、ポクプンホ号)が約25%の800両である。

 そのほかに、2020年10月の軍事パレードに登場した米国製「M1エイブラムス」に酷似の戦車9両もある。

 この米国製M1エイブラムスに酷似の9両を除けば、1973年に製造開始された戦車あるいはこれよりも古い戦車で、旧型の戦車ばかりである。

 このような戦車保有の状況の中、5月4日の朝鮮中央通信によれば、金正恩氏が、戦車工場を現地で指導したという。

 その際、20世紀の装甲兵器を最新式の戦車や装甲車と交代させるのは、陸軍近代化において最も重要であると強調した。

 具体的には、朝鮮式の構造設計と火力システム更新に加え、高出力エンジン、動力伝達装置の開発により、以下のような改良を行った。

①戦車乗員の操作の利便性を向上
②戦車の機動性を向上
③防護能力向上のため新型アクティブ装甲板、電子戦装置を装着

写真1 北朝鮮公表の新型戦車

出典:朝鮮中央通信(北朝鮮兵器の写真は、以下同じ)