3.現代戦に合う砲弾の増産というが現実は
金正恩氏は6月13日、軍需工場を現地指導した。そして、2025年上半期の砲弾生産の実態を確かめた。
そして「現代戦の要求に合う新型の威力ある砲弾の生産を増やすために、生産能力を一層拡大せよ」と述べた。
写真5 総書記が砲弾製造工場を視察している様子

ウクライナ戦争では、ウクライナ軍は米欧から供与された長距離精密誘導砲弾を発射して、ロシア軍の火砲陣地や指揮所、兵站施設を攻撃し、破壊した。
北朝鮮がロシアに供給しているのは、通常の砲弾であり、墳進弾(弾底部にロケットモーターを組み込んで発射後に推進力を上げて射程を伸ばす砲弾)でも、精密誘導でも、長射程でもない。
写真6 左:通常砲弾 右:長射程精密誘導砲弾

ロシアと北朝鮮は、この精密誘導砲弾の技術を得て製造したいという熱意はある。
だが、ロシアも製造できてはいない。当然、北朝鮮もできるはずはない。北朝鮮は、こういった砲弾を製造したいという要望はあるが、現実には不可能な状態である。
4.ドックに繋がれて行われた駆逐艦進水式
5000トン級駆逐艦、「チェ・ヒョン(崔賢)」級の2号艦「姜健(カン・ゴン)」の進水式が5月21日、日本海側の清津造船所で行われた。
ところが、2号艦の横滑り進水過程で事故が発生し、船底に穴が開き(翌日、穴は開いていないと修正した)水中に横転してしまった。
6月5日に直立、6月6日復旧が完了し、清津の埠頭に係留、その後、羅津船舶修理工場のドックに移動し、修理され6月13日進水式が実施された。
今後、「この艦艇は来年の中頃には海軍に引き渡される予定」になっている。
写真7 新型駆逐艦「姜健」の進水式の様子

進水式の写真を見る限り、ドックに水を入れた状態で、艦は前後左右から鎖で繋がれている。
その鎖で引っ張られ、やっと自立しているように見える。
進水式というのは、自立して水に浮いている状態のはずだが、この艦は、まだ、ドックに繋がれたままである。
ドックにつながれているということは、今後、ドックの水を抜いて、本格的な修理に入ると予想される。
1号艦は、左に3~5度傾いているが、この2号艦も多くの問題があるものと考えられ、実戦に使えるかは不明である。
この艦が、日米韓の軍艦の前に現れれば、改めて比較分析したい。
本題ではないが、珍しい内容が写真7に映っているので紹介する。
写真の右下には救急車が3台駐車され、右上には金正恩専用列車が停車している。金正恩氏の健康に最大の注意を払っていることが、この写真で分かる。
5.ロシアの兵器を真似ても自滅するだけ
ウクライナ戦争では、ロシアの防空兵器「S-300/400」は、米欧の巡航ミサイルを撃墜できていない。
ロシアのウラジーミル・プーチン大統領はかつて、これらの防空ミサイルは米欧の弾道ミサイルをも撃墜できると豪語していた。
実戦では、弾道ミサイルどころか、速度が遅い巡航ミサイルでさえも撃墜できないでいる。
イランも同じ防空兵器を保有していたが、イスラエルや米軍の航空攻撃やミサイル攻撃を防ぐことはできなかった。
それどころか、イランの防空兵器はイスラエルの攻撃の初期段階で破壊されてしまっていた。ロシア兵器は全く役に立たなかったのである。
北朝鮮は、新型兵器を製造しては、優れた兵器と豪語しているが、前述の分析で明らかになったように、それらの兵器は実戦では役に立たず、米欧の兵器に簡単に破壊されてしまうだろう。
北朝鮮の通常兵器への期待と現実には、大きな乖離がある。北朝鮮は、その乖離を映像や発表でなんとかごまかしているようだ。