防衛費増額要求の裏にあるトランプ戦略を正しく読み取ることが日本にとって重要だ(写真は11月18日サウジアラビアの皇太子を出迎えるためにホワイトハウスから出てきたトランプ大統領、写真:ロイター/アフロ)
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 米国・ホワイトハウスが新しい「国家安全保障戦略」を公表し、日本のメディアの多くは、「日本に防衛費増額を要求」という点に焦点を当てて、これを報じた。

 確かにこの「戦略」の中には、「我々は日本や韓国に防衛費の増額を求めていかなくてはならない」という主張が盛り込まれている。

 ただし、この主張ばかりに目が奪われては、トランプ政権が打ち出した国家安全保障戦略の本質を見誤る危険性がある。

 国家安全保障戦略の全文を読んでみると、なぜ日本に防衛費の増額を今求めるのかについて、その基となる根本的な考え方が示されていることが分かる。

 そもそもこの文書は、一般に言われる戦略というよりは、ドナルド・トランプ大統領の政治的信念やイデオロギーに基づく世界観を強く前面に押し出したものとなっている。

 日本としても、防衛費増額要求の背景にあるこの世界観を十分に理解した上で、これにどう向き合うのかを考えていかなくては、木を見て森を見ない対応になってしまうだろう。

 日本への防衛費増額要求の背景という観点からこの「戦略」を読むと、特に注目されるのは次の3点である。

 第1は、米国が国際協調主義から決別して、アメリカ・ファーストのみならず、すべての国が自国の利益第一に動くことを想定して外交に臨むことを宣言している点。

 第2は、西半球を米国の勢力圏と定めて、外部からの干渉を許さず、地域内での米国支配を確立しようとするトランプ版モンロー主義。

 そして第3は、アジア地域において米国が重視するのは経済であることを明確に示している点である。

 これらの3点が、日本への防衛費増額要求にどう結びついているのか、以下順番に見ていくこととしたい。