国際協調主義から国家第一主義へ

 国家安全保障戦略の冒頭部分では、冷戦後の米国外交が自由貿易と国際協調を重視してきたのは、「外交政策エリートたち」による重大な過ちであったと切って捨てている。

 このような政策が、グローバリズムと同盟国の「ただ乗り」という過ちを招いたというのである。

 そして「米国の宗教的・文化的健全性」を保った上で、「健全な子供たちを育む強く伝統的な家庭を増やしていく」ことなしに米国の繫栄はないとして、移民の制限を強く主張している。

 このような考え方は、単に「アメリカン・ファースト」として米国に適用されるだけではなく、「各国がそれぞれの利益を第一に追求することによって世界はうまく機能する」のであり、「国家間組織による押しつけがましい侵害」には反対だというのである。

 このように国際協調による秩序形成よりも、各国独自の利益から結びついた利害関係の同盟という考え方に立つと、「米国はもはや、ただ乗りや貿易不均衡には耐えられない」ということになる。

 その延長上で、「同盟諸国は米国が豊かで強力であることが自国の利益にもなること」を理解すべきであり、「同盟国がGDP(国内総生産)比ではるかに大きな防衛費を負担することを期待する」との考え方が示されている。

 すなわち本「戦略」は、国際的な平和を維持するために各国が応分の負担をして協力しようということではなく、強力な米国が必要だと思う各国は、米国優位を維持するために米国を支える努力をせよと、明確に宣言していると言えよう。