日本はどう対応すべきか

 以上3点の背景を踏まえて、日本は米国による防衛費増額要求も含めた各種のアプローチにどのように対処していけばよいのだろうか。

 まずは、このようなトランプ政権による国際協調切り捨て、国家利益第一という考え方が、今後本当に世界を動かしていく潮流になるのかどうかを見極めなくてはならないだろう。

 本「戦略」において批判的に取り上げられているように、欧州諸国は必ずしもこのようなトランプ政権の考え方に与せず、どうにかして国際協調を取り戻そうと模索しているようにも見える。

 米国の内向きと西半球重視の姿勢はトランプ政権以降もしばらく続くという指摘も多々あるが、米国内にもこれに反対する意見は多く、米国だけ見ても将来は定かではない。

 日本としては、自由と民主主義という価値観の下で、欧州諸国や韓国、オーストラリア、カナダなどと連携して望ましい国際秩序を構築していくことが、中国・ロシア・北朝鮮といった権威主義諸国に対処していくためにも重要である。

 トランプ政権は、中国やロシアなどもそれぞれ大国としての利益を追求する権利があるとして、勢力圏を分割しようとしているようにも見えるが、欧州や日本としてはすんなりそれを認めるわけにもいかないだろう。

 またトランプ政権にとって、アジアは「経済的に」重要な地域なのかもしれないが、日本にとってアジア地域の平和と安定は経済のみならず、国民の生命を守るために死活的に重要なのである。

 トランプ政権としては、経済的利益さえ確保することができれば、権威主義的国家と勢力圏を分割することにやぶさかではないかもしれないが、ウクライナの例にも見られるように、その狭間にある国にとっては、これは死活問題である。

 これらのことを考えると、日本の防衛費増額が結果として米国の望む方向と一致するとしても、それによって何を目指すのかについては、日本が主体的に考えていく必要があるだろう。

 日本が今後どのような世界を望み、そのために果たそうとしている役割は何なのか、それを考えた上での防衛力はどのようなものであるべきなのか、それを自ら真剣に考えることが、今こそ求められている。