新規装備購入・開発の予算を拡張、「防衛力の構造的強化」へ舵を切った韓国
米国が提示したGDP比5%という基準に対し、2026年度の韓国防衛予算(韓国では国防費という)はGDP比2.45%水準の65.9兆ウォン(約7兆円)に過ぎない。5%基準を満たすには予算を2倍以上に増やす必要があり、これは予算調整のレベルを超え、国家財政の根本的な再配分を迫る要求となる。
もっとも、韓国の国防予算は過去10年間、一貫した増加傾向を示してきた。
2015年から2026年まで、予算は75.7%増加した。特に2025-2026年の増加率7.5%は、2008年以降で最高水準である。防衛に係る間接費用まで合わせると(いわゆるNATO基準)、GDP比は3.5%を超え、徐々に米国が求める水準に近づいている。
注目すべきは、2026年予算における「防衛力改善費」(新規装備購入・開発)と「戦力運営費」(人件費など日常的経費)の配分の変化である。
このところ人件費圧力の高まりで防衛力改善費比率は29.1%まで低下していたが、2026年の防衛力改善費は前年比11.9%増の約20兆ウォンに達し、戦力運営費の5.8%増を大きく上回った。その結果、防衛力改善費比率は国防予算の30%以上へと回復している。これはトランプ政権の圧力をむしろ機会とし、韓国が「防衛力の構造的強化」へ舵を切ったことを意味する。
2015-2026年韓国防衛予算(日本円換算額)の推移(出所:韓国国防部、筆者作成)
韓国が予算を優先配分した3分野とは
増額された2026年度の防衛力改善費は、3つの優先分野に集中配分された。
第1に、韓国型3軸体系への投資(8.8兆ウォン)である。「3軸体系」とは、キルチェーン(先制打撃)、韓国型ミサイル防衛、大量応懲報復からなる。従来は米軍の拡大抑止に依存してきた核・ミサイル対応を、韓国独自で完結させようとする体系であり、弾道ミサイル・迎撃ミサイル・潜水艦などの幅広い手段を網羅する。この分野への集中配分は、韓国による対北抑止の独自化を象徴する。
第2に、航空機分野の予算増加(2.4兆ウォン)であり、KF-21ボラメ(国産戦闘機)の初量産着手が牽引した。2030年代までに120機以上を配備し、米国製装備への依存度を相対的に低減することで、トランプ政権の「米国製武器購入増加要求」に対する交渉余地を生み出す可能性を秘めている。
第3に、AI基盤有・無人複合戦闘体系への拡大(2161億ウォン)だ。これは、ウクライナ戦争の教訓を反映したものである。人口減少で兵力削減が不可避な韓国にとって、AI・無人体系による戦力代替は構造的課題への対応として位置づけられる。
2026年韓国防衛予算の構造と防衛力改善費の配分(出所:韓国国防部、筆者作成)