中国・ロシア・北朝鮮など周辺国からの脅威認識は高まる
「脅威とは能力と意思の乗積である」という国際政治の基本定理がある。韓国政府は対北朝鮮のみと強調するが、周辺国の脅威認識は、韓国の表面的意図ではなく、実在する攻撃能力に基づいて形成される。域内安保環境において、この意思と認識のズレは不安定性をもたらしうる。
よって、韓国の防衛力増強は、米国の要求に応じる形ながら、周辺国にとって「攻勢的シグナル」として受け取られてもおかしくない。
中国にしてみれば、海空軍、ミサイル戦力によるA2/AD(接近阻止・領域拒否)戦略のさらなる強化を図ることが当然ということになる。ロシアは北朝鮮への軍事技術提供、中国との連携強化を通じて、地域内の戦力バランシングを試みると考えられる。北朝鮮は従来型防衛が独自では不可能になる中、先制核使用ドクトリンの強化に向かい、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の精密化、SLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)搭載原潜確保を加速するだろう。
トランプ政権は「同盟国の防衛費増額によって米国負担を軽減」したいのだが、それが叶っても東アジア全般の安定性は損なう可能性がある。
韓国はそのジレンマから逃げられない。米国の要求に従えば周辺国の脅威認識を高める。従わなければ独自防衛ができないのは無論、同盟関係が揺らぐ。物理学と同様、国際関係にも「作用・反作用の原理」が適用される。今後、地域全体の安定をどう保つか、工夫が求められる。
ここまで述べてきたように、韓国はトランプ政権の「GDP5%の防衛費」要求に対して自主防衛能力強化を選択した。それは日本の安全保障政策にとっても示唆する点が多い。