南鳥島周辺海域にレアアース泥が集積する理由

中村:日本の領海や排他的経済水域内では、南鳥島周辺海域以外には考えられません。私たちは最初、太平洋全体でどのようにレアアース泥が分布しているかを調査・研究しました。

 現状、レアアース泥は太平洋の真ん中あたりで生成される資源であることが分かっています。陸から遠い海域の海底にレアアース泥がある。理由は陸からの砂や埃などが届かないからです。

 そのような場所で、魚の骨や歯が海水中のレアアースをくっつけながら海底に積もるという仕組みでレアアース泥は生成されます。ごくわずかな量が長い年月をかけてゆっくり降り積もっていくのです。しかし、陸に近いところだと、陸から飛んでくる大量の砂や埃も海底に積もるので、レアアースの含有率(濃度)が下がってしまいます。

 日本列島はユーラシア大陸の縁にあるので、常に大陸からの黄砂などが降り注いできました。ところが、南鳥島だけはハワイなどと同じ太平洋プレート上に存在しています。

 プレートは少しずつ移動します。南鳥島も1億年ほど前にはタヒチの辺りにありました。移動の過程でレアアース泥ができる太平洋の真ん中を通り、そこで貯め込んだレアアースを日本の海域まで運んできてくれたのです。これが日本のEEZ内では南鳥島の周辺だけにレアアース泥がある理由です。

──南鳥島周辺のレアアース泥の採掘では、どのような企業や組織が中心になるのでしょうか。

中村:そこはまだはっきりとは分かりません。世界的に見ると、海底鉱物資源の開発は大きな企業ではなくスタートアップが中心になって挑んでいますが、日本で考えると、1つは資源系の企業、たとえば石油企業や金属資源を扱う企業などが候補になるのかもしれません。

 加えて、商社などもこうした可能性の中に入ってくると私たちは考えています。資源は採るだけではなく、いかにユーザーに届けるかが重要です。商社であれば、その辺りまで含めてサプライチェーンを構築できる。そこに個別の技術やノウハウを持つ企業が入るのが現実的なのかもしれません。

 行政の側では、経済産業省が中心になって関わっていくことになるはずです。日本は鉱業法に基づいて資源開発を担っていますが、鉱業法をつかさどっているのは経産省です。また環境面では、環境省も重要な存在になっていくと思います。

中村 謙太郎(なかむら・けんたろう)
東京大学大学院工学系研究科附属エネルギー・資源フロンティアセンター教授
東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター・センター長。東京大学大学院工学系研究科 エネルギー・資源フロンティアセンター/システム創成学専攻、東京大学工学部システム創成学科 知能社会システムコース (PSI)教授。千葉工業大学次世代海洋資源研究センター招聘研究員。主な研究テーマは、海底鉱物資源の探査、鉱物資源の成因解明、地球ー生命の共進化プロセスの探求。

長野光(ながの・ひかる)
ビデオジャーナリスト
高校卒業後に渡米、米ラトガーズ大学卒業(専攻は美術)。芸術家のアシスタント、テレビ番組制作会社、日経BPニューヨーク支局記者、市場調査会社などを経て独立。JBpressの動画シリーズ「Straight Talk」リポーター。YouTubeチャンネル「著者が語る」を運営し、本の著者にインタビューしている。