地球外生命が存在するための条件

小林:はい。そういう点では、タイタンは非常に興味深い星です。

 タイタンの地表大気圧は約1.5気圧で、温度は約-180℃。水が凍る温度は、1気圧下で0℃です。タイタンの地表は、水が液体で存在できるような環境ではありません。

 けれども、メタンやエタンの凝固点は1気圧下、約-180℃。太陽から離れた寒い場所ではありますが、タイタンの地表ではメタンやエタンは、液体として存在できるのです。

 また、タイタンの大気の構成成分の大半を占めるのは、窒素とメタンです。これが原始地球と非常によく似た組成であること、さらに、タイタンにはこれまで別の星ではあまり見つかっていない有機物があるということも、タイタンに生命が存在しているのではないかという期待を増す要因となっています。

メタンとエタンの混合液の湖があるとされる土星の衛星タイタン(写真:Science Photo Library/アフロ)メタンとエタンの混合液の湖があるとされる土星の衛星タイタン(写真:Science Photo Library/アフロ)

──となると、生命存在のためには液体の水でなく、液体の有機物があればいい、ということになるのですか。

小林:有機物でなくても、液体であれば何でもいいと思います。

 まず、なぜこれまで、液体の水が生命の存在に必要不可欠と考えられてきたかというと、生命の代謝や複製をするためには流動性のある液体がその細胞内を循環しなければ難しいだろう、という考えがあったからです。

 液体と言われて、私たちが一番初めに思い浮かべるのは、摂氏数10℃程度で液体として存在できる水やアルコール類です。そこで、これまでは「水」をターゲットとして生命探査が主として行われてきました。

 ただ、「摂氏数10℃」という条件を取っ払って、ずっと低い温度で液体となるようなものを考えると、先ほど出てきたメタンやエタンに加えて、窒素なども候補になります。

 その中で、私が一番面白いなと感じているのは硫酸です。

──硫酸ですか?