体の片側にピリピリとした痛みが出て、しばらくすると帯状に赤みを帯びた発疹ができ、やがて水膨れになる帯状疱疹。人によってはかなりの痛みを伴うこともあるが、病院で治療しなくても2~3週間で自然に治る。しかし、厄介なのは重篤な合併症を引き起こしたり、治った後も痛みが続く後遺症になるケースもあることだ。
痛みを抱えると、QOL(生活の質)が著しく下がってしまうので、できれば罹りたくないものである。巷では「新型コロナウイルス感染やワクチン接種によって帯状疱疹の発症が増えている」という話題も目にする。そこで、帯状疱疹とはどういう病気なのか、そもそも罹らないためにはどうすればよいのか。また、新型コロナウイルスとは関係があるのかを愛知医科大学皮膚科学講座の渡邉大輔教授に聞いた。
潜伏し続ける「水ぼうそう」の水痘ウイルスが暴れ出す
――帯状疱疹とは、どのような病気なのでしょうか。
渡邉大輔教授(以下、渡邉) 帯状疱疹の原因になるのは「水痘ウイルス」で、初めての感染では「水ぼうそう(水痘)」を発症します。多くの方が小学校に入学する前までに罹ったことがあるのではないでしょうか。
水痘ウイルスには厄介な性質があり、水ぼうそうが治った後も神経節という背骨の近くにある神経のかたまりに長期にわたって潜伏します。それが再活性化し暴れだして神経にダメージを与えることで、帯状疱疹の初期症状のチクチク、ピリピリする痛みを起こします。
やがてウイルスは皮膚に到達して発疹を作り、水膨れになります。神経節に沿ってウイルスが現れて帯状に広がるのが特徴で、顔や体の左右どちらか、上半身に症状が出ることが比較的多いですが、全身どこに出てもおかしくありません。
――経験者に聞くと、ある日突然発症するそうですが、何がきっかけで潜伏している水痘ウイルスが暴れ出すのでしょうか。
渡邉 免疫の機能低下がきっかけになると考えられていて、加齢やストレス、疲労などによることが多いようです。日常生活で心理的・肉体的なストレスがかかっている人、高齢者が要注意となりますが、ほとんど避けがたいとも言えます。水ぼうそうに罹ったことのある人は、誰でも帯状疱疹を発症しうるのです。
初期症状の痛みは「ピリピリ」「チクチク」「ズキンズキン」「焼けつくような」「突き刺すような」と人によってさまざまで、衣服が触れるのも耐えられない、夜も眠れないといった強い痛みを感じる人もいます。この痛みを感じるようになってから数日~1週間後に発疹や水膨れが現れます。水膨れはしばらくするとかさぶたになり、2~3週間程度で自然に治ります。