疑義ある用途の国土を探せ

 予算やマンパワーの問題もあり、また憲法上や民法上の制約でこれ以上の規制ができないとその道の専門家たちはいうが、重要施設周辺のわずか1km圏内しか調査できないことや、売買規制に踏み込めないというのは残念である。

 現行規制だと、ドローンを飛ばす発着場はつくれるし、レーダーの妨害も容易に可能だ。米国の対米外国投資委員会CFIUSは、軍・政府施設周辺の場合、最大100マイル(160km)までを審査対象(規制区域)にしている。改善できない理由に国際法(WTOルール)を持ち出すなら、諸外国並みの土地規制を持ってからいうべきだ。

 重要土地等調査法は、「面」的にもっと広いエリアを対象とし、国土「利用」の実態上、用途に疑義がないか。事案によってはより深く背景を捉えるための情報の収集が欠かせない。

 例えば、a.情報ソースとしてALOS(陸域観測技術衛星)、GIS(地理情報システム)データ等を駆使して洗い出し、問題可能性のある場所を抽出し、b.登記簿や住民基本台帳の情報、各種届出の情報に加え、各種専門家を交えた税務上の背景等を深掘りしていくことが必要である。

 こうした作業を可能にするには、①登記情報に連動した近代的な所有者の把握システム、②所有者名義ごとの土地を即座に一覧(名寄せ)可能な基盤、③不動産の所有法人(合同会社等)と支配者(出資者)との関係が秘匿されない仕組み(制度改正)など、土地所有のグローバル化に対応した情報基盤の整備が急がれる。