供給側から見るとどうか?
畜産分野(牛肉)の場合は今、「大手流通業者による系列化」と「中小畜産事業者の廃業」が進んでいる。コメ農業のこれからもそうなっていく可能性が高い。時間の経過とともに、コメの生産と流通分野の再編(垂直統合)が進みゆき、規模の小さいコメ農家ほど、作ったコメを買い叩かれるようになる。
やがてコメ農家はアホらしくなって米作りをやらなくなり、就業者の高齢化(稲作経営主の全国平均年齢69.8歳:2022年)と相まって草刈り、水管理をやる人もいなくなっていくだろう。効率が悪い中山間の農地は大規模化ができず、スマート農業にも向かない。「負動産」になり下がるので、農地を手放す農家はもっと加速していくにちがいない。

令和版「囲い込み」
昨秋以降、全国各地で、普段は見かけない米の買い付け業者(異業種)が農家の庭先で現金を渡し、コメを直接集荷していったという。筆者の地元播州のみならず、北関東はじめ各地で聞かれる動きで、農業界では話題になった。
資金の出どころは不明だが、高く売れるから農家は差し出す。ただ、きちんとした場所に保管されているか、ちょっと心配だ。ずさんな管理をするとカビが生えたり、虫が混入して台無し*1になる。
買い占めの対象はコメだけではない。
その生産基盤である農地にも及んでいる。数年前からの全国的な動きだが、過疎地の上流部にある限界集落の農地や半島部の農地まで買収されている。こうした現象が北海道、青森のみならず、近畿、中国、九州各地…にまで広がっている。
農地を求める地上げは多くの場合、農地法の制約*2もあって日本法人がフロント役を担っている。形式だけは整えている株式会社や合同会社等が登場する。そして発電も農業もしないのに農地、山林を買収し、抱え続けている。
実際、登記簿が不動産屋名義や開発会社名義に変更されている土地もあるが、異業種の者は地上げをした後、登記簿はそのままにしているケースが少なくない。再エネバブルが続いたここ数年、こうした事例は本土のみならず、国境離島(長崎県福江島等)でも起こっている。
「なぜ資金力のない小さな日本法人が次から次と農地を買い、そのまま寝かせておけるのだろう?」
素朴な疑問がこれだが、資金の出所が不明な買収で、令和版の「囲い込み」(enclosure)である。中には「金の出所は中国、上海電力だ」と言い切る者もいる。
*1 筆者は小規模だが豆の生産と販売をしている。品質保持のために玄米用の中型保冷庫に収穫した豆を保管している。温度は12度以下とし、除湿は欠かせない。
*2 農地法第3条に基づき、農地の売買・貸借に際しては農業委員会の許可が必要になる。2023年9月より、農業委員会への申請には国籍を記載することが必要になり、2025年4月からは在留期間の記載が義務化され、短期在留者には認められないこととなった。