5月23日、東京都内のスーパーマーケットで、米売り場を視察する小泉進次郎農水相=代表撮影(提供:産経新聞社)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

「コメを買ったことがない」と発言した江藤拓前農林水産大臣が事実上更迭され、小泉進次郎新大臣が就任すると、政府の備蓄米をこれまでの一般競争入札に代わり、随意契約で小売業者に売り渡す政策を打ち出した。

 随意契約で政府が決める売り渡し価格は玄米60キログラムあたり1万700円(税抜き)とし、店頭価格は5キログラムあたり2000円(税抜き)になるとされる。全国のスーパーで販売されるコメの平均価格は、3月の第1週から5キログラムあたり4000円を上回って推移しているから、その半値になる。

 しかし、それで高騰するコメの価格が全体的に下がるのだろうか。

備蓄米放出の後に必要なことは…

 一時的に破格の2000円のコメが出回れば、全国の販売平均価格は下がるだろう。しかし、これに連動して高値の続く銘柄米やブレンド米も下落するとは限らない。備蓄米の放出には制限を設けない方針だが、残る30万トンの備蓄米がなくなってしまえば終わる。安いコメの買い溜めの懸念だってある。

 これが対症療法であるのだとすれば、やはりその先にある根本的な農政改革が必要となる。政府は1971年から2017年まで減反政策をとってきた。2018年以降も補助金を使って事実上の減反を続けてきた。これがいまになってコメの需給バランスを崩し、コメ不足と高騰につながっているという指摘だ。小泉大臣も「減反はやめる」と発言している。石破茂首相も、5月21日の国民民主党の玉木雄一郎代表との党首討論で、「増産の方向に舵を切れというご主張は、私は同意をいたします」と答えている。

 だが、そう簡単にコメの増産などできるのだろうか。

 そこでまずは、80年前の終戦から今日に至るコメの歴史について振り返ってみたい。