
農業=高齢化・低収益。そんな閉塞感に満ちたイメージを覆した畔柳茂樹氏の「ブルーベリーファームおかざき」。45歳で脱サラ。無人栽培、観光農園、IT集客という3つの武器を手に、農業に眠る“伸びしろ”に挑み続けた畔柳氏が見る農業の未来。
※この記事は『最強の農起業!』(かんき出版)より一部抜粋・編集しました。
斜陽化する日本の農業
日本の農業の再生は可能なのか。もう手遅れなのかもしれない。これだけ進化のない業界だから、衰退して斜陽化していくのは、ある意味当然だ。一概に年齢だけでは測れないとは思うが、就業者の平均年齢が67歳という農業は、すでに持続の可能性を失っていると言えるだろう。
一般的には、これだけ国家予算を投入しても活性化しない産業は淘汰されていくものだが、幸いなことに農業は、食の安心安全、食料自給率、国土保全などの観点から国家の基本戦略の一部になっている。
選挙においては、必ず公約として農業政策が掲げられるし、農家からの一票は国政を左右することも多い。だから農業はなくすことはできない産業だ。国家予算をジャブジャブ投入しているものの、抜本的な改革は行われず、対症療法的な延命策に過ぎない政策ばかりで、日本の農業は坂道を転げ落ちている。
農業に関する悲観的な話ならいくらでもできる。農業を志す方にとっては、将来が不安でいっぱいになるような話ばかりだ。しかし発想を変えてほしい、考え方ひとつでこのピンチをチャンスとして捉えることができる。ここが農業の実に面白いところだ。
2016年に自民党農林部会長の小泉進次郎氏が、農業について興味深い発言をしているので紹介する。
「僕がまず言っておきたいことは、農業ほど伸びしろのある産業はないということ。(中略)農業では当たり前のことができていないから、やればどんどん生産性が上がるはず。農業の成長産業化、儲かる農業への転換は必ずできます」(2016年2月6日号『週刊ダイヤモンド』)
この発言こそ、この国の農業の現況を端的に表しているし、ここに大きなヒントがある。つまり「他業種で当たり前のことが、農業では、なにひとつできていない」ということ、また、逆も真なりで「当たり前のことをやりさえすれば、たやすく儲かる」ということだ。
私もまったくの異業種である農業の世界に足を踏み入れたとき、とても驚いたことがたくさんあった。長年、農業に従事している人には気づけなくなっていることが、自動車業界に20年いた私にとっては、いとも簡単に気づくことができた。その当たり前のことができていないという農業の問題点を、私なりに整理してみた。