農業が抱える4つの問題点

 問題点の1つ目は、農業には生産性という考え方がないことだ。時間当たりで考えて効率化を追求していく発想がない。労働時間を無視したトータルの売上・利益ばかりを追いかけている。

 問題点の2つ目は、農業はIT化が著しく遅れていることだ。一部の先進的な農家を除けば、いまだに通信手段は携帯とFAX、栽培管理は経験と勘、以前に比べれば機械化されたが手作業に頼ることも多い。データ管理をしっかりやっている農家は極めて少なく、大半はどんぶり勘定だ。

 問題点の3つ目は、農業は価格を自分で決められないことだ。大半の農家は販路を自分で持っているわけではなく、JAなどを通して市場に出荷し、価格は市場に委ねられる。

 京セラ創業者の稲盛和夫氏が「値決めは経営」という言葉を残しているように、製造業で育った私にとってみれば、コストをいかに安くするかというのと同じくらい、いくらで売るかは重要なファクターである。それにもかかわらず、そこを他人に委ねてしまう全く主体性のないこのやり方に驚くばかりだ。

 問題点の4つ目は、農業はお客様の顔が見えないことだ。市場出荷している農家には、どんなお客様が購入し、そして満足しているかどうかが、全くわからない。通常はお客様から喜びの声をいただいて励みにしたり、逆にクレームをいただいて反省して改善のきっかけにしたりするが、農業にはこれがない。

 この4つの問題点を私はどう解決してきたのか。試行錯誤の結果、「無人栽培」「観光農園」「IT集客」の3つにたどり着いた。

 ここからは、新しく農業を志す方に向けて、成功するためにはなにが必要かを、私なりの考えでお伝えする。

 農業には補助金という仕組みがある。新規就農や新規に事業を立ち上げる場合など、補助金とセットで考えている場合も多い。

 もらえるものはもらえばいいという考え方ももちろんあるが、私はオススメしない。補助金をもらうことによってかなり制約を受けるし、補助金頼みの事業になってしまう懸念があるからだ。多額の補助金を投入した事業を数多く見たが、うまくいっている事業は数少ない。

 たとえば、工夫すれば5000万円で済むハウスが、補助金のおかげで超豪華仕様になって1億円のハウスになったりする。日本の農業用設備に、グローバルな競争力がまったくないのは、この補助金の仕組みによるところも大きい。

 自腹を切り、借金することによって、誰しも真剣に事業に向き合うはずだが、そこに返済しなくていいお金が転がり込むことによって、依存的な経営体質になってしまうのではないだろうか。