
(舛添 要一:国際政治学者)
コメの価格が下がらない。そんなときに、江藤拓農水相が「コメを買ったことがない」、「コメは家に売るほどある」などと発言し、国民の批判を受けた。そこで、石破茂首相は江藤大臣を事実上の更迭とし、後任に小泉進次郎・前選挙対策委員長を任命した。直ぐにコメの値段は下がるのか。石破政権は大丈夫か。
内閣支持率が下落
石破内閣の支持率が下がり続けている。最近の世論調査をみると、内閣支持率・不支持率は、毎日新聞が22(−2)%・62(+1)%、共同通信が27.4(−4.8)%・55.1(+1.3)%、読売新聞が31(±0)%・56(+2)%、時事が20.9(−2.2)%・52.9(+1.7)%となっている。
石破首相は、少数与党で政権運営に苦労しているが、この支持率の低さは何が原因なのだろうか。

理由はコメ価格の高騰、そしてトランプ関税への対応である。
国民が最も敏感に反応するのは物価高であり、それに伴う生活苦である。とくに象徴的なのが、米価である。昨年夏以来価格が上がっていき、1年も経たないうちに2倍に跳ね上がった。コメは主食である。食べないわけにはいかない。
もし、フランスでパンの価格が10カ月で2倍になったら、暴動が起こるであろうし、政府は必ず価格を抑える。いずれの国も、主食に対しては、政府は全力を上げて価格安定策を講じる。
ところが、日本政府は備蓄米の放出を行っただけで、全く無策であり、価格は一向に下がらない。

流通過程の問題、備蓄米販売用の袋の生産など、様々な問題があるが、あまりにも時間がかかりすぎている。小泉大臣への交代と共に、政府は備蓄米の競争入札をいったん中止して、随意契約での売り渡しを実施する。需要に応じて無制限に放出するという。
この措置が、米価の下落につながるかどうかは不明であるが、5月21日の党首討論では、石破首相は、「コメ(5キロ)は、3000円台でなければならない」と明言し、実現できなければ責任をとるとまで言った。まさに背水の陣で臨む必要がある。
国民のもうひとつの不満は、トランプ関税であり、これも物価高につながる。担当の赤沢経済担当相が、今週訪米するが、今のところ明るい材料はない。石破政権の外交能力についても、国民の評価は高くない。