
(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)
コメの価格高騰が続いている。
政府が備蓄米を放出したにもかかわらず、全国のスーパーで販売されたコメの平均価格は16週連続で値上がり、4月20日までの1週間は5キロあたり税込みで4220円を記録している。これは昨年の2倍の価格になる。
主食のここまでの急騰は異常事態で、中国なら暴動が起きていてもおかしくはない。
米国の思うつぼ
なぜ、コメの価格は下がらないのか。投機筋の売り渋りだとか、インバウンド需要が増加して外国人が大量に消費したからだとか、農林水産省が算定した2024年の生産量が猛暑などの影響で実際には少なかったなど、諸説飛び交っているが、どこか釈然としない。ただ、コメの流通量が不足しているのは確かなようだ。
そこへきて、いわゆるトランプ関税の交渉カードに、米国からのコメの輸入量を拡大する案が政府内で検討されていると報じられた。日本のコメの輸入関税についてのトランプ大統領の批判をかわしつつ、輸入米を市場に流通させることでコメの価格高騰を抑えられる効果が期待でき、一挙両得、一石二鳥というわけだ。

だが、それでは米国の思うつぼだ。いまでこそ食料自給率38%(カロリーベース)の日本は、食料安全保障を自ら放棄し、米国によって骨抜きにされるようなものだ。
それは終戦から80年になる日本の歴史が証明している。