福島第一原発敷地内にある処理水で満たされたタンクの数々(写真:AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 世界の食料をめぐる駆け引きが活発化している。

 ロシアはウクライナから黒海を通じて運び出される穀物の輸出を容認する合意を7月17日で停止させたばかりだが、プーチン大統領は28日にサンクトペテルブルクで開かれた「ロシア・アフリカ首脳会議」でアフリカ諸国に穀物の無償供与を提示した。

 アフリカはロシアと並んでウクライナ産小麦の依存が高い。合意停止で食料不足の懸念の強まる国々を、食料を使って懐柔する動きだ。ソマリアやジンバブエなどの6カ国に、今後3〜4カ月で穀物を無償供与する用意があるという。

 一方で中国は、東京電力福島第1原子力発電所の処理水の海洋放出について強く反発しているが、7月に入って中国税関当局が日本からの輸入水産物に対する放射線の検査を全面的にはじめた影響が出ている。

日本産食料品の事実上の「禁輸措置」

 日本から輸出した水産物が、中国各地の税関で長い間、検査のために留め置かれる。水産物は冷凍でも日持ちがしない。税関に留め置かれることで、中国には輸出ができないことになる。事実上の中国による輸入禁止措置だ。

 日本の水産物は、中国が最大の輸出相手国で、昨年の輸出額は871億円にのぼる。日本の水産業への打撃も大きい。