これが食料を武器にした、新しい「チャイナリスク」であることは、すでに書いた。

(参考)処理水放出を口実に、中国が日本に仕掛けた「新・食料戦争」

 ところが、ここへきて水産物だけでなく、日本のコメや野菜、さらには菓子までも検査のために留め置かれて、輸出が滞る事態が起きている。香港やマカオでも同様の措置が取られている。

日本からの食品輸入を絞りに絞った末に「緩和」チラつかせて外交カードに利用

 日本の農林水産物・食品の輸出金額は毎年増え続け、昨年は1兆4148億円で前の年を14.3%上回った。このうち最大の相手国が中国で輸出額は2783億円になる。前年比25.2%の増加だ。次いで香港の2086億円が占める。

 もうここまでくると、嫌がらせもいいところだ。日本の農林水産物・食品を中国市場から締め出すことで日本の経済に打撃を与え、輸入緩和をチラつかせて外交の取引材料にする。

 中国はすでに、新型コロナウイルスの起源の調査を求めたオーストラリアに対して、大麦やワインといった農産品や食品の輸入制限措置をとった。それがどういう影響を与えるか、知っている。

 そこに懐柔策にも使えれば、経済的な外交取引の武器ともなる食料の多様性がある。しかし、こうしたことは、今に始まったことでもなければ、歴史の転換機の随所で見られたことだ。