2019年6月、大阪で開催したG20首脳会議中に、中国の習近平国家主席(右)との二国間会談に出席したトランプ米大統領2019年6月、大阪で開催したG20首脳会議中に、中国の習近平国家主席(右)との二国間会談に出席したトランプ米大統領(写真:ロイター/アフロ)

(柯 隆:東京財団政策研究所主席研究員)

バイデン政権の政策転換が“転覆”すれば株価大暴落も

 アメリカの大統領選は事前の世論調査結果に反して、トランプの楽勝だった。この予想外の結果を受けて、世界主要株式市場も大きく動いた。特に東京とニューヨークの株価は高騰した。ひとまず市場はトランプの当選を好意的に受け止めたとみていいだろう。

米大統領選挙の選挙結果を受け勝利宣言したトランプ前大統領(2024年11月6日)米大統領選挙の選挙結果を受け勝利宣言したトランプ前大統領(2024年11月6日、写真:ロイター/アフロ)

 むろん、前政権時を見ても、トランプは優れた政治リーダーとは言えなかった。それでも、アメリカの選挙民がトランプに再び投票したのはChange(変革)を期待しているからであろう。

 仮にハリスが当選した場合、それは民主党政権の継続性が期待されたのであろうが、トランプが当選したため、これまでのバイデン政権の数々の政策は継続されず、大きく転換する可能性が高い。この政策転換の可能性こそ株価を押し上げているが、転換が“転覆”になった場合、株価が大暴落するリスクも孕んでいる。

 トランプ政権においてもっとも安心できないのは、彼の不規則発言である。政治指導者の発言のアナウンスメント効果はときには実際の政策よりも破壊力が強い。トランプの不規則発言がアメリカだけでなく、世界を大きく翻弄すると心配されている。

 2期目のトランプ政権「トランプ2.0」を展望する前に、まず1.0を振り返った方がいい。

 トランプという人はアメリカファーストを信奉するビジネスマンだったため、国際感覚を大きく欠いている。だからこそ、1.0においてアメリカが提唱して成立した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)から離脱してしまった。もともとTPPは中国に国際商取引ルールを守らせるための枠組みであり、アメリカの離脱により事実上、頓挫した。