写真提供:共同通信社
令和のコメ騒動に象徴されるように、日本の農業は「食料自給率の低下」とともに語られ、やがて後継者不足や耕作地放棄の問題に行きつく。長年、「危機」が叫ばれながらも、解決の糸口は見えない。だが、メディアや政治家の言う「農業の危機」は本当なのだろうか。本稿では、大量離農により大きく変わりつつある農業の今を描いた『農業ビジネス』(山口亮子著/クロスメディア・パブリッシング)から内容の一部を抜粋・再編集。
不作や価格高騰に伴うコメ不足のリスクを早くから見越し、安定的に料理を提供する体制を築いたゼンショーホールディングス。同社の独自の工夫とは何か?
将来の供給不足の懸念で農家を囲い込む人たち
『農業ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)
「生産者がいなくなる」「これまで通りに買うことができなくなる」 …。スーパーや食品メーカー、外食産業で農産物を買い付けるバイヤーには、こうした危機感を持つ人が少なくありません。
農家が減って高齢化しているうえ、地球温暖化の影響で野菜や果樹、コメなど多くの作物がこれまで通りに作りにくくなっています。離農が進んだり、老朽化した設備を更新できなくなったりして、産地を維持できなくなるところが増えると予想されます。
農業流通は長らく、農家が弱く、買い手であるスーパーや実需者が強い「買い手市場」でした。ここ数年で物価の上昇が起きるまで、野菜の価格は30年近く上がっていません。その間、肥料や農薬、段ボールといった資材費と人件費は上がり続けていたので、実質的には値下げが起きていたことになります。
キャベツやハクサイ、トマト、イチゴなど、異常気象に伴う不作で値上げが相次いでいます。消費者は高いと感じますが、これまでの価格が安すぎたのです。値上がりした状態で、「ようやく適正価格になった」と感じる農家は少なくありません。






