足元の高値を支える「売り手の論理」とは?
販売量が減ったのは、それ以前に放出された備蓄米やブレンド米を消費者がかなりの量買っていたことに加え、出回り始めた新米の価格が期待していたより高く、手が出せない、といった事情が考えられる。
食料インフレで苦しくなった消費者は少しでも安いものを探す。つまりコメの収穫量が増えたのに、上がりすぎた価格が消費者を遠ざけけたのである。
結果として、売れない新米は在庫として積み上がった。農水省は農協などの出荷段階と販売段階(玄米の仕入れ量が年間4000トン以上)の在庫量を集計している。直近10月時点では出荷、販売段階合わせた在庫量は306万トンと前年同月比で62万トンも増加。とりわけ販売段階の在庫は80万トンと過去7年でもっとも多く、新米だけで53万トンに膨らんだ。

商品市場の常識で言えば、価格高騰で需要が落ち、在庫も急増すれば需要が再び喚起される水準まで価格は崩れる。
ところが、今年産米は昨年を大幅に上回る価格で集荷され、その高値が卸、小売店と従来通りに経費を上乗せして店頭価格が形成された。売れないからといって値下げに踏み切れば、場合によっては赤字に陥りかねない。価格が急落すれば大量に抱えた在庫にも評価損が発生する。生産コストや物流経費の上昇も加わった足元の高値は売り手の論理に支えられている。
とはいえ、このまま大量の在庫を抱え続けるわけにもいかない。我慢できずに値下げに動く卸や小売店が出てくる展開も予想される。どこかが動けば堰を切ったように値下げラッシュが起きるのも商品市場の常だ。
生産者や卸などが会員として参加する米穀安定供給支援機構(米穀機構)は取引関係者に需給や価格動向を聞き、DIとして毎月まとめている。DIとは一般に景気動向や業況などの「良し悪し」について方向性を示す指数で、50を境にそれ以上は上向き、下回れば下向きとみていることを示す。11月の調査で向こう3カ月の需給DIは31まで低下して緩和傾向が鮮明だ。向こう3カ月の価格DIも32と4年ぶりの水準まで低下。取引関係者の間で先安観が強まったことが分かる。
12月5日の鈴木憲和農相会見では記者からこんな質問が出た。