「新潟県での講演会で、今後、コメ余りによる暴落の可能性もあるんじゃないかという話が、国内最大手の米卸、神明ホールディングスの藤尾社長から出た。大臣は価格の先行きをどう考えているか」

 さすがに鈴木農相は下がるだろうとは言えない。「価格はマーケットの中で決まっていく」との公式発言にとどめた。その上で「我々(政府)が大切だと考えているのは、生産者の再生産や再投資が可能(な価格水準)であること。しかし、消費者も安心して購入できる価格であることが必要だろう」と強調した。

お餅の店頭価格は1年前より5割前後上昇

 石破前政権は減反政策以来の生産抑制策を見直し、フル生産に舵を切った。10月に発足した高市政権で、小泉前農相からバトンを受けた鈴木農相は就任会見で「現状で(コメの)不足感は解消されたと認識しているので、適正な需要に見合った、適正な生産水準を行っていく」と軌道を修正した。

 鈴木農相は農水省出身で、在住の南陽市や米沢市など農業の盛んな山形2区から12年に初当選した。農協の影響力がまだ強い地域であり、就任会見では「地元の組合長だった方が(JA)全農の会長であるので、(JAグループとは)本当に親しく、よくよくコミュニケーションはとっている」と述べた。思い切った備蓄米放出で価格上昇を抑え、フル生産に動こうとした石破-小泉路線とは立ち位置も違うだろう。

 本記事冒頭で今年のコメ生産は飼料米や備蓄米から主食用にシフトしたことに触れた。コメ(水稲)全体の生産面積は簡単に増やせないので、主食用を増産すれば飼料米以外にもしわ寄せがいく。

 お正月のお餅になる餅米や酒米もそうだ。すでにお餅の店頭価格は1年前に比べ5割前後も上昇。農水省が酒米について12月に公表した資料は「令和7年産は生産量(検査数量)が明らかになった段階で検証する必要があるが、昨年の調査で推計した令和7年産の需要は8万2000~8万4000トンで、想定していた需要を十分に確保できていない状況があるのではないか」と指摘した。