「壊滅的なカオス」なら金価格は1万4500ドルも暴騰

 昨年後半からの上昇が「スピード違反」だったとはいえ、これまでの上昇を支えていた要因は依然として残る。「ウォーシュ氏は、利下げを明確に要求し、期待外れのFRB議長に忍耐のかけらも示さない大統領をも満足させなければならない」(WSJ紙)。

 トランプ政権は原子力空母などの米軍戦力を中東地域に集結させ、イラン情勢は緊迫の度を増している。相互関税を突きつけられて欧州諸国の間で湧き上がった米国への不信感は、グリーンランド領有(デンマーク自治領)をめぐる追加関税の脅しで決定的なものになった。

 デンマークの年金基金、アカデミカーペンションは保有する約1億ドルの米国債を売却する計画を公表した。同年金は政治的な理由ではなく、米国の財政不安を理由としているものの、欧州全体にこうした動きが広がる可能性は否定できない。

 欧州ではデンマークの年金基金による米国債売却のほか、ポーランド中央銀行が金保有量を現在の550トン(国際通貨基金=IMFへの直近報告ベースでは543トン)から700トンに増やすとしている。

 マーケット・リスク・アドバイザリーの新村直弘共同代表は「過去のETFや金準備の残高変動をもとに回帰分析を行うと、ポーランドの150トン積み増し(購入)だけで金価格を110ドル押し上げる要因になる」と話す。

 新村氏は米ドルが基軸通貨の地位を完全に失うような「壊滅的なカオス」に陥るケースと前置きした上で、「欧州諸国が保有する米国債全て(540兆円相当)を金に置き換えた場合、金価格を1万4500ドルも暴騰させる計算になる」という。