金市場から見ると一緒に奈落の底に向かうドルと円

 もちろん、そんなカオスは誰も望まないはずだ。ただ、中国のみならず、米国債の保有額を減らし、金準備を増強する動きは世界の奔流になりつつある。

 米国がたびたび同盟国である欧州に脅しをかけ、米欧の亀裂が深まる現状を見ると、程度はどうあれ欧州の米国債売り、金準備の増強が加速するのは非現実的と言い切れない。

 日本も状況は似たり寄ったりだ。

 高市政権が掲げる積極財政策や食品の一時消費税ゼロ策は国債市場で財政への不安を高め、長期金利が上昇。円安も加速して日米の通貨当局がレートチェック(取引状況の照合)で押し戻すに至った。

 為替市場で一時1ドル152円台まで円高が進んだ1月28日、田中貴金属工業が発表した小売価格(消費税込み)は前日比で1グラム311円高い2万7985円と最高値を更新。金先物の中心限月(4月物)が最高値を記録した29日には、午後発表の小売価格が3万248円と初めて3万円を超えた。

 長期の視点で見れば、金市場ではドルと円が互いに「弱さ比べ」をしながら一緒に奈落の底に向かって落ちていく姿が浮かび上がる。

 昨年12月16日に公開された日本経済新聞電子版の記事は5円玉の「時価」が5円を超え、10円玉も9円弱に達していると伝えた。

 硬貨製造に使う銅やニッケル、亜鉛などの金属価格が額面と並ぶ水準を商品市場では「メルティング・ポイント」という。この水準を超えて素材価値が上がると、硬貨が溶かされ(メルト)、素材を取り出して売られるリスクが出てくる。