「大分時速194キロ事故」で犠牲になった小柳憲さん(遺族提供)
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「高裁判決から2週間の期限ぎりぎりになって、今朝(2月5日)、福岡高検が最高裁に上告したという連絡が入りました。福岡高裁で罪名を『危険運転』から『過失』に落とされ、懲役8年が4年半になったときには本当にショックを受けました。

 一審は裁判員裁判で、国民の意見を取り入れた判決であったにもかかわらず、高裁では検察側の証拠(走行実験や証人の証言など)をことごとく否定され、どうしても納得できませんでした。そんな私たち遺族の思いを受け止めてくださった高検に感謝するとともに、短い期間にもかかわらずオンライン署名に賛同して下さった方々、そして、ご支援頂いた多くの方々に御礼を申し上げます」

 そう語るのは、2021年2月9日、大分市の県道で時速194キロの車に衝突され命を奪われた小柳憲さん(当時50)の姉、長文恵さんです。

一審で認められた「危険運転」が控訴審で振り出しに

 本件については、すでに以下の記事で取り上げました。

一般道を時速194キロで爆走して死亡事故、なぜこれが「危険運転」じゃない 無謀運転の犠牲となった被害者の遺族が訴え「過失ではなく危険運転で裁きを」(2022.9.11)

【時速194キロ死亡事故】初心者なのに「加速時の圧迫感に感動」と法廷で語った被告の元少年、なぜ親は放任した(2024.12.6)

 5年間の主な経緯については、以下をご参照ください。

【大分/時速194キロ死亡事件の経緯】
●2021年
2月9日 衝突事故発生

5月7日 「自動車運転処罰法違反(危険運転致死)」の疑いで、被告(当時19)を大分家裁に送致。同家裁はその後、大分地検への送致(逆送)を決定。

●2022年
7月22日 大分地検、「過失運転致死」で加害者を起訴

8月14日 遺族が「危険運転」への訴因変更を求めて会見、署名運動開始

12月20日 大分地裁が「危険運転」への訴因変更を認める

●2024年
11月28日 大分地裁(裁判員裁判)、「進行を制御することが困難な高速度である」などとして「危険運転致死罪」を適用。懲役8年(求刑12年)の実刑判決を下す。その後、双方が控訴。

●2026年
1月22日 福岡高裁が一審判決を破棄。「『制御困難な高速度での走行』という構成要件を満たすには立証が不十分」などと指摘し、「危険運転」を見送り、「過失運転」で懲役4年6カ月の判決

1月26日 遺族側が要望書を最高検、福岡高検に提出。短期間で7万筆以上の署名を集める

2月5日 福岡高検が高裁判決を不服として最高裁に上告

 上記を見てもわかる通り、福岡高裁は、まさに本裁判を「振り出し」へと逆戻りさせたことになります。

実証実験が困難なため、遺族の支援者が作成した比較動画

 1月22日には、筆者も福岡高裁で判決を傍聴してきました。平塚浩司裁判長は、1時間以上にわたってとつとつと判決文の読み上げをおこない、危険運転致死傷罪の構成要件である「進行制御困難な高速度」について認めませんでした。

 その結果、遺族は再びこの事件を「危険運転致死罪」の土俵に上げるため、懸命な努力を強いられることになったのです。