首都高池袋線下り線、美女木ジャンクション付近の事故現場。荷台部分が大破して焼け焦げたトラック(左下)=2024年5月14日、埼玉県戸田市(写真:共同通信社)
昨年5月、首都高速の美女木ジャンクションで発生した大型トラックによる追突多重衝突事故。複数の車が炎上し、6名が死傷するという大惨事となった。事故から約1年半後の11月4日、東京地裁の裁判官は「前例にあまりないほど犯情が悪い」として、被告に懲役7年6カ月の判決を下した。裁判中に児童ポルノ所持法違反でも追起訴されていたとはいえ、なぜ、「過失運転致死傷罪」の法定刑である“7年”を超える判決となったのか。ノンフィクション作家の柳原三佳氏が、異例ともいえる本判決に込められた意味をレポートする。
「通り一遍の謝罪は、誰の心にも響きませんでした」
11月4日、東京地裁の大川隆男裁判長は、「過失運転致死傷罪」に問われていたトラック運転手・降籏紗京被告(29)に対して、「危険性を全く顧みないまま、まさに無謀な運転を漫然と続けた」「交通法規を遵守する意識が低く、前例にあまりないほど犯情が悪い」などとして、懲役7年6カ月の判決を下しました。
そして、判決文を読み終えると、証言台の前に立つ被告に向かって、
「あなたは自分の犯した重大な罪を認識していないと感じました」
「通り一遍の謝罪は、誰の心にも響きませんでした。取り返しのつかない重大な結果に真摯に向き合うべきです」
「遺族や被害者の言葉を何度も思い出し、あらためて向き合い、真の反省とは何か、あなたの生涯をかけて、逃げることなく、自分のすべき贖罪について考え続けてください。それがあなたにできるせめてものことです」
と、厳しい言葉を連ねて説諭を行いました。
筆者はこれまで、多数の交通事故判決を傍聴してきましたが、被告の悪質性や反省のなさについて、ここまで踏み込んで糾弾する内容は初めてでした。

