事故で重傷を負わされ入院中の高橋琴さん(仮名。家族提供)*写真は一部加工してあります
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 今年6月、大阪府堺市で24歳の女性が大けがを負うひき逃げ事件が発生した。2日後、逮捕されたのは27歳の女。勤務先のラウンジで酒を飲み、泥酔状態で運転していたとして「危険運転致傷」で起訴されるも、ひき逃げについては「気づかなかった」と供述したためか起訴されていない。身体と心に大きな傷を負い、やり場のない怒りと疑問を抱きながら初公判を迎えた被害女性と家族の思いを、ノンフィクション作家の柳原三佳氏が聞いた。

被害者と目も合わせず、謝罪の言葉も口にせず

 9月17日午後2時20分、大阪地裁堺支部で始まった初公判。黒いスーツに身を包み、うつむき加減で法廷に現れたのは、今年6月、飲酒運転で自転車の女性をはねて大けがを負わせたとして、危険運転致傷罪に問われている木村穂乃香被告(27)です。

初公判が開かれた大阪地裁堺支部(筆者撮影)

 化粧っ気のない顔に地味な眼鏡、黒い髪を後ろでひとつに束ねているその姿は、SNS(*現在は削除)に自らアップしていたあの華やかなメイク姿の写真とは全く別人で、冒頭から『人はここまでイメージを変えられるものなのか……』と驚かされました。

 裁判官の言葉に促されて法廷の中央にある証言台の前に歩み出た木村被告は、まず真正面の裁判官に向かって一礼。すぐ右側には、車いすに乗り、顔面をガーゼで覆われた被害者の高橋琴さん(24・仮名)が、検察官、被害者参加弁護人の横に並んでいます。

 しかし、被告は目の前にいる琴さんに目を向けようともせず、結局、謝罪の言葉をひと言も発することはありませんでした。