(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
またしても、「揺さぶられっ子症候群」事件で、無罪判決が確定しました。
2014年、生後1カ月の長女を揺さぶり、頭に大けがをさせたとして傷害罪に問われていた母親(40=事件当時34)に対し、最高裁は2021年6月30日付けで検察側の上告を棄却したのです。
我が子と引き裂かれた上に無実の罪を着せられ
最高裁による初めての判断ということもあり、このニュースは7月2日、各メディアで一斉に報じられました。
(外部リンク)乳児揺さぶり、逆転無罪確定へ 検察側上告を棄却 最高裁(時事通信)https://www.jiji.com/jc/article?k=2021070200898
上記記事にもある通り、裁判の争点は、長女のケガが、過度に体をゆすることで脳内に損傷が生じる、いわゆる「揺さぶられっ子症候群(SBS=Shaken Baby Syndrome)」に該当する否かでした。
母親側は一貫して無罪を主張しましたが、一審の大阪地裁は、検察側証人の小児科医らの証言を根拠に、「長女には急性硬膜下血腫があったため、成人に激しく揺さぶられた」と判断。そして、「当時自宅にいたのは母親と当時2歳の長男だけで、長女に暴行を加えることができたのは母親だけだった」として有罪判決を下しました。
一方、二審の大阪高裁は、「2歳の長男が長女を床に落とした」とする弁護側の主張を検討。脳神経外科医らの証言を踏まえ、長女が落下した際に急性硬膜下血腫を負った可能性もあると判断し、「揺さぶる暴行は認定できない」と結論付けたのです。