本の中には、当時、母親が怯えたように語ってくれた以下のコメントが掲載されています。

「逮捕された後、私の名前は我が子を殺そうとした犯人として大々的に報道されてしまいました。記事には事実とは異なることがいろいろ書かれていましたが、それがあたかも真実のように広がっていくのです。ネット上には今も、当時の報道がたくさん残っていて、酷いコメントの書き込みもされています。顔写真などもネットに晒され、知り合いも誰が見ているかわかりません。私はもう、人と接するのが怖くて仕方ないのです」

「なんで二人も産んだん?」

 虐待親と決めつけたような大阪府警の取り調べも、酷いものでした。

 留置場に身柄を置かれ、何時間も詰問された彼女は、弁護士から手渡された『被疑者ノート』に、取り調べの際に警察官から浴びせられた数々の言葉をしっかりとメモしていました。

●9月18日
「〇〇くん(*長男の名)にはどう説明するんや、もしくは、説明しーひんのか。臭いものには蓋か!」

●9月24日
「子ども嫌いなん? なんで二人も産んだん? 準備もできてへんのに生まれてきて、ほんま、かわいそうやわ」

●9月27日
「警察はみんな調べてる。ハッタリや思うたら大間違いや! この9か月、あんたは自分の保身ばかり考えてたんやろけど、こちらも9か月、同じ月日が流れていて捜査してるんや」

「反論できるならどうぞ。3分経った、あと2分あげるからどうぞ。自分で墓穴掘ってるって、わからへんのか! 自分の都合悪いから、下向いてんのか!」

 あまりに理不尽な取り調べの実態を知り、憤りを感じた弁護士が、「大阪府警による取り調べは黙秘権の侵害に該当し、かつ自白強要とも取れる」として、大阪府警本部長に抗議書を送りつけたこともあったそうです。