(柳原 三佳・ノンフィクション作家)
今、有罪率99.9%と言われる日本の刑事裁判で、“異常”ともいえる事態が起こっています。「SBS(揺さぶられっ子症候群)」事件で、虐待を疑われた被告人に対する無罪判決が相次いでいるのです。
いずれの裁判も、同じ小児科医が検察側の証人として「揺さぶり虐待」を強硬に主張しましたが、判決はその医師の診断内容や証言の信ぴょう性に疑問を呈し、こうした証拠に基づいて有罪に持ち込もうとする検察側の姿勢をも厳しく批判するものでした。
しかし、2月19日、想定外の出来事が起こりました。大阪高検の田中嘉寿子検事は、2月6日に大阪高裁で下された無罪判決に異議を唱え、最高裁に上告したのです。
検察側で「虐待」を主張するのはいつも同じ医師
昨年10月25日、大阪高裁で逆転無罪判決が下され、その後確定した事件については、すでに以下の記事で執筆しました。
(参考記事:2019.11.10掲載)
『虐待裁判で逆転無罪、無実の祖母を犯人視した専門家』脳出血の原因を争う裁判で検察側証人「小児科医」が見せた傲慢
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/58199
孫への虐待を疑われた祖母は、一審で懲役5年半の実刑判決を受けており、すでに1年3カ月にわたって大阪拘置所に勾留されていました。