脳のケガや病気の本当の専門家は誰か?
2月6日、大阪高裁の西田眞基裁判長は判決文の中で、検察側が証人として採用した溝口医師のCT画像読影の誤りと、それに対する法廷での釈明について、次のように指摘しています。該当部分のみ抜粋します。
『(溝口医師は)・・・小脳テント付近の部位のものは、量も少なく、硬膜下血腫であるとは断定できないとした上、若干、誇張した内容の読影であったと認め、原審における該当の証言内容を撤回しているのであり、併せて、自身(*溝口医師のこと)を含む小児科医は、脳神経外科医のように開頭手術をして血腫の除去等をするものではないため、画像診断に当たり、厳密ではない部分があったなどと説明している。本件で有罪を導く推認の最も重要な基礎となるCT画像の読影に誤りがあったことを自認するものであり,到底見過ごすことができない』
さらに、高裁で弁護側の証人として法廷に立ち、溝口医師の診断内容の誤りを具体的に指摘した小児脳神経外科の朴永銖(ぼく・えいしゅ)医師や青木信彦医師の証言については、
『朴医師及び青木医師は、本件に関連する豊富な医学文献に触れる機会を積み重ねているのみならず、その文献やCT画像から得られる知見が確かなものかどうかを、日々の開頭手術の臨床の現場において自身で確かめることを継続してきた立場であり、この点において小児科医との間に差異がある』
と評価しました。そのうえで、
『これら脳神経外科医の専門領域における医学的な経験則の獲得の程度に対し、大きな疑問を投げ掛けることは難しく、その証言が有罪の推認を妨げる位置付けにあって内容に合理性もあるといえる以上、証言内容を排斥するのは難しいというべきである』
と明記。溝口氏の証言のみを採用した一審判決を棄却したのです。