2026年1月21日、生後8か月の日七未ちゃん。髪も伸び頬もふっくらと成長している。ただ自発呼吸もなく、意識もないままだ(家族提供)
2025年5月、愛知県一宮市で出産間近の妊婦・研谷(とぎたに)沙也香さん(31)が軽乗用車にはねられ、2日後に死亡するという事故が起こった。緊急の帝王切開によって取り出された赤ちゃんは脳障害を負い、現在も意識不明のままだ。刑法では、『胎児は母体の一部』とみなされ、交通事故で胎児を死傷させても原則として罪には問われない。家族は署名活動を展開し、『胎児も本件の被害者として加害者を起訴すべきだ』と訴えていたのだが……。この事故で娘を失った母親が、現在の思いをノンフィクション作家の柳原三佳氏に語った。
出産目前で交通事故に巻き込まれた愛娘、帝王切開で取り上げられた孫娘
妊娠9カ月の妊婦を車ではねて死亡させたとして、自動車運転処罰法違反(過失致死)の罪に問われた児野尚子被告(50)の第2回公判が、1月26日、名古屋地裁一宮支部で開かれました。
この日、注目されたのは、事故後に生まれた日七未(ひなみ)ちゃんが「人」として認められるか? つまり、日七未ちゃんに対する「過失傷害罪」を検察が適用するか否か、という点でした。
事故現場。沙也香さんは道路右端を散歩中、後ろから逆走してきた軽自動車にはねられた(筆者撮影)
しかし、結果的に検察は、日七未ちゃんが事故の瞬間には『胎児』だったことから、「『人』として罪の対象とするのは難しい」と判断。その一方で、初公判のときには一切出てこなかった日七未ちゃんの名前と被害の事実を起訴状に追加するかたちでの訴因変更を請求し、裁判所はこれを許可しました。
この日、傍聴席では、本件事故で亡くなった妊婦・研谷沙也香さんの母、水川美香さん(62)がそのやりとりをじっと見守っていました。「胎児は人ではない」という刑法の壁を、母として、そして日七未ちゃんの祖母の立場としてどのように受け止められたのでしょうか。
昨年8月におこなった沙也香さんの父親へのインタビュー(下記)に続き、お話を伺いました。
(参考)車にはねられた妊娠中の娘、死の間際に帝王切開で産んだ孫には重い障害、なのに「加害者は胎児への責任なし」だと?(2025.8.23)

