2024年7月、米国の共和党大会でトランプ氏が正式に同党の大統領候補に選ばれた。来月には民主党大会を控えており、11月の米国大統領選挙に向けて各党の動きがいよいよ本格化している。今回の米国大統領選挙では「暗号資産」が大きなテーマの一つとして注目されていることをご存じだろうか。以下では米国大統領選挙と暗号資産の関係について述べていく。
(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)
トランプ氏、米暗号資産保有者5000万人取り込みへ
2024年に入ってから米国で暗号資産に対する注目度が一段と高まっている。
2021年に暗号資産やNFT(非代替性トークン)への投資ブームが起きた際には、投機的な側面ばかりが着目されていた。しかし今では、暗号資産が伝統的な金融市場における資産クラスとして認知されつつある。
そのきっかけは、1月に取引がスタートしたビットコインの現物ETFである。ブラックロックやフィデリティといった大手金融機関が暗号資産市場に本格的に参入し、数兆円規模の新たな資金が流入した。
これに伴ってビットコインの価格も高騰し、公的なメディアで暗号資産が取り上げられる機会も急増している。
これまで、フェイスブック(現:メタ)の創業者マーク・ザッカーバーグ氏やツイッター(現:エックス)の創業者ジャック・ドーシー氏、オープンAIの創業者サム・アルトマン氏などIT業界の著名人が暗号資産を支持してきたが、それらの声は「新しいもの好き」の枠を超えることはなかった。
しかし現在では、ブラックロックCEOのラリー・フィンク氏が公にビットコインなどの暗号資産を肯定するコメントを発表し、他の金融機関のアナリストやストラテジストも暗号資産について見解を述べるようになっている。つまり、IT業界のみならず金融業界からも暗号資産の将来性を期待する声が上がっている。
こうした経済の主要分野からの支持を背景に、今年の米国大統領選挙では暗号資産が投票結果を左右するテーマの一つとして重要視されている。米国には5000万人(人口の約15%以上)を超える暗号資産保有者がいるとされ、これらの層を取り込むために、トランプ共和党大統領候補は暗号資産を推進する立場を早くも表明している。