トランプ氏は保護主義的な政策の強化を掲げている(写真:ロイター/アフロ)

米国の大統領選挙が11月に控えるなか、世界の株式市場では早くもトランプ政権の誕生を想定した動きが目立っています。7月8日に明らかになったトランプ氏が選挙公約に掲げる共和党の政策綱領案では、国境の壁の完成や対中関税の引き上げ、化石燃料の生産拡大などが盛り込まれました。トランプ氏が再び大統領になれば、どの銘柄が勢いづくのか。日本株も大きく影響を受けるトランプ関連株について解説します。

(河端 里咲:フリーランス記者)

討論会で「もしトラ」から「ほぼトラ」へ? 防衛株や刑務所株が急騰

 11月の米大統領選挙では、民主党はジョー・バイデン現大統領、共和党はドナルド・トランプ前大統領を候補者として指名しています。6月27日に開かれた両氏によるテレビ討論会ではインフレや移民政策などをテーマに論戦が繰り広げられました。

 互いを「史上最悪の大統領」とも非難。トランプ氏は虚偽の発言が少なくなかった一方、バイデン氏は度々言葉に詰まるなど安定感や力強さが欠如した様子が見受けられ、有権者が心配していた年齢や健康状態への懸念を露呈する形となりました。

 CNNの世論調査によると、どちらが討論会で優勢だったかについてたずねた質問では、トランプ氏と答えた人の割合が67%と、バイデン氏を大きく上回りました。民主党内の一部もバイデン氏への撤退圧力を強めており、株式市場ではトランプ氏が再選するシナリオを踏まえた動きが出ています。

「もしトラ」で意識される業界の一つが、防衛関連です。

【関連記事】
【防衛株が急騰】ドイツ戦車「レオパルト2」製造会社は年初来8割高、川崎重工は9割上昇…地政学リスクで防衛費拡大(2024.5.30)

 トランプ氏は討論会で「NATO(北大西洋条約機構)諸国にもっと資金を出させるべき」などと発言。トランプ氏が再選すれば、世界的な軍事費の増加が予想され、防衛関連企業の業績の追い風になるとの思惑が広がっています。

 国内でも三菱重工業の株価が6月の終わりから一段と上昇。足元では一服感は見られるものの、年初来2倍超の水準まで高まっています。川崎重工業も7月3日に年初来高値を更新したほか、IHIも6月下旬から株価がうなぎ上りに上昇し、年初来で2倍となっています。

 討論会では「移民政策」も主な議題として取り上げられました。バイデン氏が不法移民の数が減ったと主張する一方、トランプ氏はバイデン政権が国境を開けっぱなしにしたため囚人やテロリストが入国してきたと反論し「今は史上最も危険な国境」と述べました。

 7月8日に明らかになった共和党の綱領案でも、トランプ前政権時代に着手した「国境の壁」の完成を目指すほか、海外にいる数千人の兵士を南部国境に集めて監視させるなどとしています。

 不法移民収容センターや刑務所を運営するジオ・グループの株価は、共和党の候補にトランプ氏が確実になったと報道された3月中旬以降、トランプ氏の発言などに合わせて上昇を繰り返し、足元の株価は年初来4割高となっています。