グリーンニューディールに反対、再エネに逆風

 トランプ氏が再選することで、暗雲が垂れ込める産業も少なくありません。トランプ氏の公約集「AGENDA47」では、天然ガスなどのプロジェクトに対する政府による制限を撤廃、バイデン政権が強化した自動車の排ガス規制の撤廃、グリーン・ニューディール政策への反対などを掲げています。これまでバイデン政権が勧めてきた電気自動車(EV)に対する税額控除や自動車や発電所に対する排出規制などの気候政策の多くを撤回するとしています。

 調査会社ウッドマッケンジーによると、トランプ氏が再選した場合2050年までの低炭素エネルギーなどへの投資が1兆ドル減り、二酸化炭素排出量が10億トン増える可能性があると明らかにしています。米国の太陽光発電を手がけるファースト・ソーラーは討論会の翌日は前日比約10%減、再エネのネクステラ・エナジーは4%減で取引を終えました。

 一方、「Drill, Baby, Drill(掘って、掘って、掘りまくれ)」を訴えるトランプ政権となれば、原油や天然ガスのエクソンモービル、シェニエール・エナジー、コノコフィリップスなどにとって追い風となる可能性があります。

 ノーベル経済学賞受賞者など16人は6月下旬に、トランプ氏が再選した場合、米国や世界の経済に悪影響を及ぼすと警告する連盟書簡を出しました。中国からの輸入品に厳しい関税を課すなどすれば、インフレを再燃させると指摘しています。世界経済や日本株に大きな影響を及ぼす米大統領選の行方が注目されます。

【主な参考資料】
米大統領選討論会、視聴者の67%がトランプ氏勝利と回答 CNN世論調査速報(CNN)
Agenda47(トランプ氏の公式サイト)
US November election results could decelerate energy transition, with $1 trillion in energy investment on the line(Wood Mackenzie)
トランプ氏の選挙公約、対中関税上げ 中絶規制は見送り(日経電子版)