生成AIによりデータセンターへの需要が急増している(写真:Freezeman Studio/Shutterstock)

米半導体大手エヌビディアの時価総額が6月5日に3兆ドルの大台を超え、アップルを抜きマイクロソフトに続く世界2位に躍り出ました。生成AIの開発に不可欠な半導体を手がけるエヌビディアの躍進は年初から止まらず、株式市場では足元でも生成AIに関連する銘柄探しが続いています。今回は生成AI普及の屋台骨となるデータセンター関連株について解説します。

(河端 里咲:フリーランス記者)

■エヌビディア株だけじゃない“生成AI祭り”
(1)【電力株に生成AIのインパクト】北海道電力は年初来2倍超、九州電力7割高…電力需要拡大や半導体工場建設が追い風に
(2)【データセンター株も生成AI祭り】さくらネットは年初来2倍超、冷却設備関連も上昇…シャープ堺工場は液晶から転換

シャープ工場、KDDIとソフトバンクが熱視線

 シャープやKDDIなどは6月3日、アジア最大規模のAIデータセンターの構築に向けた協議開始で合意したと発表しました。9月までに稼働を停止するシャープの液晶パネル工場(大阪府堺市)跡地にエヌビディアのAI半導体を搭載したデータセンターの早期稼働を目指すと言います。

 発表のあった3日、シャープ株は一時前営業日の終値比8%高の1048円まで急伸。シャープの業績改善を期待する買いが集まりました。


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 さらに6月7日には、ソフトバンクがシャープ堺工場の土地や建物、電源・冷却設備などを譲り受けて、2025年中にAIデータセンターの本格稼働を目指すと発表。通信大手らが生成AI開発の基盤となる大規模なデータセンターを早期に構築したい姿勢が鮮明となっています。

 KDDIやソフトバンクは携帯電話事業が収益の大半を占め、現状ではデータセンターや生成AI関連への投資が大きな株価材料にはなっていません。

 ただKDDIは23年にタイやカナダでデータセンターを新たに開業したほか、4月に生成AI開発に使う大規模計算基盤の整備に今後4年で1000億円規模の投資をすると公表。ソフトバンクも5月に生成AIの計算基盤に約1500億円を投じる方針を打ち出すなど、今後データセンターや生成AI関連事業の存在感も大きくなる可能性があります。

 国内では他にも、データセンター事業を手がけるさくらインターネットの株価(6月10日時点)が23年末に比べ2倍超で推移しています。6月5日には公募増資で約188億円を調達することを発表。北海道にあるデータセンターにエヌビディアのAI半導体などを導入する設備投資に充てる方針です。

 通常、公募増資は株式価値の希薄化が嫌気され株価は下落する傾向にありますが、翌6日には一時前日比6%高まで上昇。データセンター分野の成長に投資家が高い期待を寄せていることが鮮明になりました。