(写真:Nikolas Kokovlis/NurPhoto/共同通信イメージズ)

(松嶋 真倫:マネックス証券 暗号資産アナリスト)

 ソニーグループは、国内最大級のWeb3関連イベント「WebX」の開催に合わせて、独自のブロックチェーンネットワーク「Soneium(以下、ソニューム)」を開発したと発表した。これにより、日本を代表するグローバル企業がWeb3事業においてリーダーシップを発揮することが明らかになった。

 今回は、ソニーグループや競合先によるWeb3関連の取り組みを整理し、通信事業者がWeb3に取り組む理由について考察する。

ソニーグループが進めるWeb3事業ポートフォリオ

 ソニーグループでは、高速光回線「NURO光」などの通信インフラ事業を手掛けるソニーネットワークコミュニケーションズ(以下、ソネット)を中心に、Web3におけるインフラ事業、すなわちブロックチェーンの開発が進められてきた。

 その計画を主導してきた渡辺潤氏は、2024年4月1日付けでソネットの代表取締役を退任し、ソニーグループ本体に新設された先端インフラ事業探索部門の部門長に就任した。これは、ソネットでの試験的な取り組みが、グループ全体の事業方針へと発展したことを示唆している。

 今後、ソニー銀行が手掛けるデジタル証券(セキュリティトークン)やデジタルコンテンツ(NFT)、さらに発行が検討されているデジタル通貨(ステーブルコイン)に関する取り組みは、ソニュームという独自のネットワーク上に集約されていくことが予想される。

 また、ソニーミュージックも過去にブロックチェーンを活用した音楽制作プラットフォームを試験的に開発しており、今後、他のグループ企業においてもソニュームを活用した新しいサービスの企画開発が進みやすくなるだろう。

 さらに、ソニーグループは、日本の暗号資産交換業ライセンスを持つAmber Japan(前:ディーカレット)を買収し、暗号資産取引サービスを提供できる体制も整えている。まだ詳細は明らかになっていないが、「S.BLOX株式会社」と社名を変更し、ソニューム上で発行される様々なトークンの取引を担う役割が期待される。

 このように、ソニーグループは、Web3の技術基盤としてソニュームを構築し、その上でグループ内の多様な事業やIPコンテンツを活用して新たなサービス展開を目指している。それに加えて、Web3ならではの公共性を確保し、誰もがソニュームを利用してブロックチェーンサービスを創出できる環境を提供することを視野に入れている。