ソニーグループら通信事業者はなぜWeb3に取り組むのか

 通信事業者がWeb3に取り組む背景には、次世代インフラの主導権を巡る競争がある。Web3は、ブロックチェーンによって形成される分散型ネットワークを指し、これまでのインターネットの在り方を大きく変える可能性を持っている。そのため、通信事業者は、インターネット基盤の提供者としての地位を維持し、さらには強化するためにも、Web3の技術的発展を見逃すことはできない状況にある。

 ソニーがソニュームを開発したことは、通信事業者がWeb3におけるインフラ提供を目指す好例である。従来の通信事業者は、単なるネットワーク環境を提供する役割を担っていたが、独自のブロックチェーンを持つことで、同時に多様なデータを保管・管理できるようになる。これにより、通信サービスの枠を超えたプラットフォーマーとして、デジタル資産に関する様々なサービスを提供することが可能になる。

 また、ブロックチェーンに次ぐWeb3のインフラとして注目されているのが、楽天やドコモKDDIが開発するデジタル資産を管理・取引するためのウォレットである。現在でもドコモの「dウォレット」やKDDIの「auウォレット」などのアプリが資産管理や決済に活用されているが、Web3におけるウォレットはそれに留まらない。単なる支払い手段だけでなく、Web3サービスへのアクセスやアイデンティティの証明など、多岐にわたる用途を持つ経済活動の新たな基盤として機能する。

 このようなブロックチェーンに対応したウォレット機能をスマートフォンに内蔵しようという動きもある。新興の通信事業者であるフリービットは、独自のブロックチェーン「TONE Chain」を開発し、自社の格安スマホ利用者がトークンやNFTを管理できる仕組みを導入している。また、海外ではソラナブロックチェーン専用のスマートフォンが、所有者限定の特典などもあって人気を集めている。まだ試験段階ではあるものの、国内の通信事業者も同様に、ウォレット内蔵スマホの開発に乗り出す可能性はあるだろう。

 通信事業者にとって、Web3への取り組みは次世代のインターネット社会をリードし、新たなデジタル経済圏での競争力を強化するための不可欠な戦略である。ソニーグループのソニュームに象徴されるように、その歩みはすでに始まっており、通信事業者がWeb3を通じて築く新たなデジタル基盤は、私たちの日常生活やビジネスの在り方を一変させる可能性を秘めている。