ソニーグループの動きを受けて国内のWeb3競争が激化するか

 ソニーグループがソニュームを立ち上げたことで、他のライバル企業も同様の動きを検討し始めるだろう。国内では通信事業者を中心に、ブロックチェーンを活用した新しいサービスの開発が進んでいる。

 楽天グループは、楽天ウォレットを通じて、暗号資産取引所やNFTマーケットプレイスを展開している。また、2024年7月にWeb3サービス事業への参入を正式に発表し、年内にデジタル資産を管理・取引できるアプリをリリースする予定だ。楽天証券ではセキュリティトークンの取扱いも始めており、ソニーグループと同様、各グループ会社で様々なブロックチェーン関連の取り組みを行っている。

様々なデジタルコンテンツが取引される楽天NFT(写真:共同通信社)様々なデジタルコンテンツが取引される楽天NFT(写真:共同通信社)

 楽天グループのWeb3構想については未発表な部分も大きいが、今あるサービスやインフラをブロックチェーン上に広げることは検討していると思われる。閉じた経済圏として楽天ユーザーを増やし続けることは大事だが、現状のままでは、これから拡大するデジタル経済圏の波に取り残されてしまう。例えば、累計発行が4兆ポイントを超える楽天ポイントの一部がステーブルコインのようにブロックチェーン上で使われるようになれば、Web3の世界でも決済手段として普及する可能性がある。

 ドコモグループも、2022年に6000億円のWeb3への投資を大々的に発表し、Web3事業の拡大に動いている。2023年にはマネックスグループおよびマネックス証券との資本業務提携を発表し、その内容の一つとしてセキュリティトークンなど次世代金融商品の取り扱いを掲げている。生物多様性プロジェクト「もりまもり」や音楽プラットフォーム「Sound Desert」など、NFTを活用した取り組みにも積極的だ。

 また最近ではNTT Digitalという子会社を新設し、独自のデジタル資産ウォレット「scramberry」を提供している。博報堂と一緒に大手企業を巻き込んだ共創プロジェクト「web3 Jam」を立ち上げ、自社の持つウォレット基盤を国内事業者に導入してもらうことで、Web3のインフラを押さえようという狙いが見える。国内最大約9000万のドコモユーザーがウォレットを持って様々なデジタル資産を取引する日が訪れるかもしれない。

 他ではKDDIグループも、メタバース・Web3サービスの新しいブランドとして「αU(アルファユー)」を立ち上げ、独自のウォレット「αU Wallet」、NFTマーケットプレイス「αU market」、メタバース空間「αU metaverse」、ヴァーチャル店舗「αU place」、ライブ配信「αU live」といった様々なサービスを展開している。これらはヴァーチャル空間におけるリアルと連動した新しい体験の創出に重きを置いていることが特徴である。