民放は「禁断の領域」に踏み込んでしまったのか(写真:Sinisa Botas/Shutterstock.com)

 最近の民放の地上波テレビでは、番組の中で食品会社などの新商品やキャンペーンを取り上げる場面をよく見かける。バラエティー番組やワイドショーでは今に始まったことではないが、ついには特に「公正・中立」が求められるはずのニュース番組でも、そうした宣伝まがいの場面が散見されるようになった。

 なんとかして広告収入を上げたいという事情があるにしても、越えてはいけない一線を越えているのではないか。「視聴者に有益な情報を提供している」という理屈はあるのだろうが、それはあまりにご都合主義だろう。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

減退が続く地上波テレビのパワー

 毎週水曜日の読売新聞朝刊に「週間視聴率ベスト20(ビデオリサーチ社調べ)」が掲載されます。定点観測をしていると、少しずつ数字が下がってきていることに気づきます。

 その変化を実感するのは、20位の番組の数字です。2年くらい前まではおおむね10%以上を維持していましたが、このところ9%台に落ち込むことがほとんどです。ちなみに、7月10日に掲載された「7月1日~7日のベスト20」の20位を見ると、NHK「あさイチ」で、9.4%でした。

注:読売新聞7月10日朝刊「深読み視聴率」から表を作成。ビデオリサーチ社調べ

 20位の番組が9%台ということは、大多数が2ケタに達していないことになります。地上波テレビのパワーが減退している表れですが、それを端的に示すデータがあります。

2023年度の年間平均「世帯視聴率」<ゴールデンタイム(19~22時)>
第1位:テレビ朝日 8.9%(前年度比▲0.6%)
ビデオリサーチ社調べ

 テレビがよく視聴される時間帯である「ゴールデンタイム」で、1位が8%台というのは往時を知る一人として寂しいことです。さかのぼってみると、2006年度の「ゴールデンタイム」の1位はフジテレビの「14.1%」でした。数字だけで語るのは一面的ですが、地上波テレビのパワーが約6割になったことを示しています。

 民放各局としては、広告収入の減収を食い止め、反転させることが共通の課題です。とは言っても、簡単に視聴率が跳ね上がるものでもありません。そうした背景から、由々しき状態になっていると感じていることがあります。

 それは、CMではなく番組の本編で「明らかに商品の宣伝だろう」と思われる場面に出くわすことが非常に多くなったことです。